テキスト1979
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)コCッパの農(10月京都23新日聞号から転載私のヨーロッ。ハ旅行はこれで三回目である。いつも七月から八月ときまっており、いけばなが私の仕事なので、ヨーロッパ各地を回りつつ、各地でみる花について特に注意する。この夏もスイス、ドイツ、オランダ、フランスの各国を回りつつ、どの地方へ行っても美しい花を見ることが多く、全く感心させられる。花を飾るという考え方が日本の場c 部、階上階下のベランダから窓の外合とはよほど迩っていると思われるのだが、ことにスイスの各地方を回ってみて、一庖この感を深くした。日本では庭圏には緑の樹木を植え室内装飾として花を飾るというのが常識的だ。外を花で飾るというのが普通になっている。市街でも農村でも家屋の外部、庭や軒先など空地にはほとんどといってよいほど花を咲かせて装飾している。切り花ではなく鉢植え花屈の花であって、どいて実に装飾的に美しく栽培されている。スイスは観光立国の国なので、特に奨励されるのかと折にふれて聴いてみた。ところが決してそんなことではなく、全く花を愛する国民性であり、それぞれが花を栽培し家を飾っていることが習性となっていることが理解されるようになった。それにしても私たち旅行者にとってこれほどの慰みはない。ジュネープ、ルッツェルン、インターラーケンなど旅行者の多い都市では、早朝、市の園芸職員が道路の花壇の手入れをしているのを見かけるのだ。美しい色彩の花が古雅な建築とよく調和してやさしく華やかである。湖の渡船場だとか、小さい町の電柱の上まで形式を考えて鉢植えの花が飾ってあり、有名なスイス銀行のしかし、ヨーロッパでは屋これがよく行きと窓ぎわの各階にゼラニュームの花が咲いているのも見たその他大尚店の店頭にもことごとく花が咲いていて全く街全体が花で飾られている。私はスイスからドイツ、オランダ、フランスヘバス旅行し、広々とした丘陵地帯を何時間も走り続けることも多かった。そんな時、黄かっ色の小麦畑、緑のブドゥ畑、トウモロシの畑のつづくうちに、浪い朱色の教会の塔や農家の屋根が点在する村落を通過すると、どの家の窓にもゼラニューム、グラジオラス、ペチニアの花が咲き、全くョーロ村は色彩的であり、音楽的であることに感激するのである。大体において日本には洋花が多くスイスでみる及の花はほとんど変わりはない。カンナ、サルビア、ジニア、クジャクソウなど、また、インターラーケンのある民家の庭では、日本の貴船菊やかんぼく類のエニシダ、ユキヤナギ、ビャクスキ、キョーチクトウ、ナナカマドの赤の実のむらがりを見かけた。珍しかったのはボビー(ひなげし)の野生の花、藤袴の花。それに長野県の美ケ原で群落をつくって咲いていた「ヤナギラン」の赤紫の花が、アラスカのアンカレッジの飛行場に一面に咲いていたことだった。またアル。フスの高原地常でもこのヤナギランを見たことだった。(専渓)スイスの花

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