テキスト1979
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生花はみずぎわの揃いの美しいことが最も大切なことで、ことに大輪菊など一層足もとの揃いについて苦心する。ここに掲載した菊の写真を見て下さい。足もとがよく揃っているでしょう。自慢じゃないが、この程度の技巧がなくては、といいたいのだが、要は留の部分の作り方によって、こんなに美しく仕上がるのです。足もと(留)の部分をためて曲線状に曲げることによって揃えることが出来るのだが、これは技術の問題です。次に、生花には花台又は薄板を使って飾ることである。生花という花形は下部の台又は板との調和によってバランスがとれる花形であり、作品に品格を添えることにもなります。私達の年若いころの菊は露地栽培であった関係上、風雨の自然咲きの菊は茎の曲りもあり、茎にはくせがあって足もとを揃えるのに苦心したものですが、その反対にこのくせを利用して曲のある変化の多い花形を作ることが出来たものでした。今日の菊は花は美しいが平凡になったといえます。生花の中でも菊はむずかしいものとされている。茎の少し曲がった様な材料であれば形も作りやすいのだが、直立した形のものは花型が作りにくい。ことに大輪菊の茎が硬く直立した様な材料はいよいよ形が作りにくい。したがって生花に適する様な、茎が柔かく細く少し曲りのある様な材料を選択することになるのだが、最近、栽培される材料は花の華麗さに璽点をおき、生花用に不向きなものが多い。ビニール栽培のものが多く、まっすぐに形の一定したものを作る関係もあるのだが、ビニール栽培などのない頃には、畑作りの菊が自然の雨露をうけて咲き、木振りも曲りのあるもの、ことに晩秋の菊は菓も紅葉して、風雅という言葉そのままの菊が、材料に使えたものである。したがってこの頃の菊を生花に活けるのには材料をよく選択する必要もあり、まっすぐな菊といえども形よく花形を作りあげる技術が必要となってきて、一層むずかしいことになっている。菊の中には茎の何の柔軟なものと、質が硬く少しためても折れるようなものがある。これを選んでなるべく柔かいものを選ぶこと、平均して一輪咲きよりも二輪づきの菊が活けやすく、花の配列も形がよい。この写真の大輪菊は花も赤く黒く葉も形のよい材料であり、茎も少し柔かい。注意して曲げると曲を作ることも出来る材料であった。紅大輪菊3水拿際喜の技ぎ巧:

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