テキスト1979
130/151

この生花は大体30分程度で活け上げた。要点を正しくつかんで出来るだけ早く活けることが、結果としていちばんよいのである。「下要点をつかんで早く活け上げる手な考え休むに似たり」という言葉があるのだが、生花の場合は材料がなまの草木であるだけに、花材を扱う時間が長ければ長いほど花をいためることになり「休むに似たり」ではなく、それ以上のマイナスを加えることになる。よく考え、さて花材を持ったならばさっと作り上げる、その修練が必要である。時間を早く仕上げることがよいのではなく、的確に考え花材をいためず作り上げることにその目椋をおくのである。その習恨をつくるようにしなければ、よい花は入らない。生花を勉強することは技術の鍛練とともに、どうすればよくなるか`という判定を少しでも早くきめる、その時間的な問題、この二つが常に必要である。時間そのものが問題になるのではなく、新鮮なうるおいのある生花は、作者の頭が新鮮な間に作られるということに重点がある。実つきの雑種の椿は老木で古さびた枝振に雅趣があり、中々調子がよい。かなり小枝と葉をすかして形をととのえる。これに白椿の花のあるものを添えて活ける。この秋に入って初めてみる椿の初花である。主体になる古木と少し性格が迩うけれど、意外にょく調和している。椿は葉を少くして幹の形を見る考え方で活けることが大切で、豊かに花葉の多いものよりも枯淡な感じに作り上げるのが望ましく、そこに品格が生れてくる。このように自然の木ぶりを揃えて、生花の形を作り上げるには、充分鍛練した技術が必要であり、足もとの揃い、全体をバランスよく作り上げるのには、特に俊秀な技術が必要である。白く花の見をる開花とつほみが三輪みえており、葉が少し大きいのを適当にとり去って、老木との調和を考える。古い生花図にあるような、線の美しさを考える生花である。伝統生花の雅趣が感じられるような作品ではないだろうか。主体になる真の幹は自然の材料そのままではなく、三か所ほど切りだめ(幹に切りきずを入れてためる)をして曲をつけたが、この形の作り方にも深い考案が必要である。生花のみずぎわの揃いを美しく作ることは、なによりも大切なことだが、このみずぎわの技巧によって生花の品位を高めることになるのである。とにかく、精緻な技術と高雅な趣味を必要とする生花の代表的な作品といえるだろう。種2白椿

元のページ  ../index.html#130

このブックを見る