テキスト1978
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アリュウムの中でも細い茎の種類である。赤褐色の球形の集団化が色彩的に美しく臭気もない。細い線をまる<ためて変化を作る。純白のシャクヤクを二本、右方へ片よせて副材にする。花器は濃紺色の鉢でシャクヤクの白花と緑の葉との対照が美しい。アリュウムも用い方によっては上品に見える。アリュウム(アリアム)は、ねぎ、たまねぎ、にんにく、にらなどの総称であって一00種以上の分類がある。いけばなの材料に使うのは「リーキ」と称する小型のものが多く、特に巨大な球形の紫色のものは「ギガンテューム」という。茎に曲線条のものがあり、形に変化があるので、いけばな材料によく用いられるのは皆さんご承知の通りである。臭気が強く好ましい材料ではないが、ストレチアなどと同じ時期(十数年以前)にいけばなに使われはじめたものだが、ギガンテュームなど巨大な秤類があらわれるようになってから、かえって流行も下火になったようである。あまり趣味のよい材料ではなく、この種類のうち細い茎のもの、臭味のないものはどうにか使える、という程度の材料である。五月ごろ広い河川敷の草原に「野びる」という葱科の植物が野生する。強い風に吹かれて茎が曲線をつくる。百本ばかりを水盤に活けたことがあるが、意外に面白い花が出来た。「フトイ」は蘭草の種類である。普通のフトイは濃緑色の線条の水草だが、同じフトイの中に緑と白のたてじまの種類があり、これは細く、柔らかく、1メーター程度の長さである。またこれとよく似た種類だが、黄白色の縞が段々に染めわけられおるもの、(このテキストp3の写真参照)この――-種が私達のいけばなに使うフトイの種類である。たてじまのフトイは「シマックモ」といい、よこじまのフトイを「ダンツクモ」という。水盤に活ける夏草の中でも季節感の深い材料であり、ことに「ダンツクモ」は清楚に美しく、あしらいの花の色を考えて取合せると一恩、新鮮な感じの作品が出来る。アリュウムダンツクモアリュウムシャクヤク12

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