テキスト1978
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R先日じだいひらしょく、東京の麻布プリンスホテルの展示会で見つけてきた、古い時代平卓(ひらしょく)である。1メーター程度の横長腰高のものだが、百年以上のものらしく相当荒れてはいるが古さびた感じがあり、またその中に伝統の品格をそなえている。かなり大きいもので恐らく、寺院の床の間に香炉などを飾っていたものに違いない。素朴な工程で作られているのだが、たしかな技巧で作られているこの台は、少しの狂いもなく装飾の彫も四辺の足にも欠落損傷がない。立花を飾る台として、あるいは生花にも調Rこのページには古典的なものを三作ならべた。Rは「飾果」と称するもので花道の中の―つの装飾様式である。古い文人形式の趣味の花だが、写真の作品は容器は「かつら盆」という大きい漆盆である。ビワの実の黄色く葉の濃い緑の枝を二本、これは水につけないで横に倒して並べる(剣山を下におき枝葉を浮き上がらせる)右方に水の入る小さい容器をおき、キキョウを挿す。漆器の上に花材の配色が美しい。和する台であろうと考えられるのである。この形の平卓には大作の花を置くのもよく、また写真にあるように小品の花を飼るのも中々よく調和する。大きい卓に香炉を飾ってバランスよく見られるように、小品の花を罹くのも意外に感じのよいものである。古色蒼然たる卓であるだけに、日本種の花が調和よく、椿、菊、ぽたん、おもと、かきつばた、すいせんなど雅趣のある花がよく調和する。写真には、この車に掲色の荒目の織布を敷き、花器は古銅の立花瓶、花は淡紅のしゃくやく一輪を挿した。広々とした卓に小品の花は調和もよく品格のよい配合になっていると思う。今日の生活のいけばなとはかけ離れた感じがするのだが、また日本の古典的な装飾に、悠然とした豊かさを感じるのである。c栗山桶(くりやまおけ)は木曽、日光方面の山家の水桶を模して作った花器である。「木留桶」「日光桶」などといわれ有名である。伝統的な形が美しく漆仕上のものもある。すすき、あじさいの二種を投入挿しに活ける(中筒を用い)自然趣味の花、夏秋の花が好ましい。手に意匠があるので花葉でかくさない様に部分が見えるように活けるのがよい。床の間の地板に置くとよく調和する。時代平卓R しゃくやく小品花8

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