テキスト1978
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R手つきの篭には花も分蟄少なく入れ、淡泊な感じが好ましい。この花器は麦稗の加工品で屯灯のシェードである。中筒を用い、ささゆりを6本入れる。つぼみ、中開、聞花をとりまぜ花形に技巧を加えず、投入れ挿しのそのままの姿に入れる。花器の前低く垂れる様に入っている開花、これがこの花形を引き立て、花器に聞和させる技巧といえる。笹百合は一輪づきのものが形がよい。―一輪三輪と花の多い茎は品格も乏しく個性に乏しい。「清楚」な感覚が笹百合のいのちといえる。渓流の音をきくような幽静な情緒がこの山百合のもち味であろう。ささゆりは私達のこころの花である。Rササユリ⑧ガマササユリナナカマド五月のすえ山木の緑がひときわ鮮やかになるころ、笹百合の花が咲きはじめる。四季の花材のうちには野生の花も多いのだが、花屋の店で買える美しい自然の花は、このササユリが最高といえる。タメトモユリの大輪の花も呆華だが、ササユリの様なやさしさや風雅な味わいに乏しい。笹原の中に点々と咲くこの百合をササユリと名づけ、またその葉の形が笹葉に似ているので笹百合ともいわれるのだが、サユリ、サッキュリ、ノユリの呼び名もある。静岡県以西の山地に咲くといわれるこの百合は、栽培の出来ない野生稲だが、それだけに季節感豊かに初夏の詩趣を深々と味わうことの出来る自然の花である。草山に浮き沈みつつ風の百合ささゆりを一、二本、細口の花瓶に活けるのはやさしく清楚で好ましいが、手つきの篭などにたっぷりと投入れ挿しに活けるのも一隔季節感があって美しい。開花のものよりもつぼみ中開の花に風情があり、葉の形のよきものを選んで活けるようにしたい。たかし-、ささゆり@ R 6

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