テキスト1978
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いけばなの作品自体がよい、ということは第一の条件だが同時に、花器がわかる、ということも必要なことであり、花と花器との結びあいによって、真実のよいいけばな作品が出来ることになるのであるから、この点を充分注意しなければなりません。このページに「アジサイ」を活けた古銅の壷と、「フトイ、の水盤がある。銅器の壷は古い年代のものであり、なんとなく品格が感じられるが、フトイを活けた水盤は四日市陶器の数もの水盤で、桔古用の花器である。写真で見てもその重みがはっきりと感じられると思う。実はこの日キキョウを活ける水盤を考えてみたのだが、色彩の関係から黒色の陶器がいちばん花を引き立てると思い、私の手持ちの水盤を調べてみたが、黒色水盤の適したものがなく、や市内の道具屋を見て廻ったが適当なものが見あたらない。結局、夕刻になり花を活ける時間になって致し方なくこの水盤を使うこととなった。壷と青褐色の水盤を二個さがしあててきたが、黒色水盤は見あたらず、写真にある平凡な花器を使うことになった次第。いろいろ心をつかうのだが中々むずかしい条件があるものである。近頃は電気窯や重油窯にかわり、以前の様に松で焼く窯も特殊な窯元のみになった関係もあって、いよいよ水盤の様に容積の広いものを作ることが難しくなったのだろうし、形の狂いやすい水盤が敬遠されるのも当然と考えられる。中国の古い水盤は感覚的に古く、新しい感じの水盤が一庖望まれるのである。(6月23日)白と緑のフトイと紫のキキョウ」を活けた黒色陶器午前中から五条坂方面RだんつくもききょうR白と緑を段々に色をわけた「ダンツクモ」と紫の「キキョウ」を生花に活ける。水盤株分けの花形である。ックモは真、副、胴と数を多く入れ、留に本、控に二本を入れる。以上で主株(おもかぶ)の花形を作り、少し空間をあけて水を見せ左方にキキョウを子株に入れる。キキョウの花形は低く作りックモとは反対の花形の真、副、留の三体に堅くならない様に花形を作る。前方の低い花を水盤の黒色の(左勝手)右の前へ垂れる様にさげて、色彩効果を考える。季節的にも清爽とした配合である。今日の生花は伝統の花形と技法をしっかりまもりつつ、また一方に色彩効果と今日的な美しさを見せることに深く注意することが大切である。気品と色彩美が必要である。一3

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