テキスト1978
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私達のいけばなに使う材料も、年月のたつにつれて変っ治、大正時代から変りなく使っている材料もあり、また、古いころに盛んに使われていた材料であっても、このごろはほとんど使わない、というものもある。弁慶草、新菊、せきちく、えぞぎく、など夏の花として大衆的な花だったが、このごろはほとんど見られない。熊脱閲、など、七月の広葉の草花だがこれもこのごろの花屋では見られない様になった。花でも一種の流行の様に、うつり変ってゆく様に111心えるのだが、古くからあって意外に流行らないのはゼラニューム、エビネの花。フランスやスイスではゼラニュームの朱色の花がどの街角でも見られる大衆の花なのに、日本では時々、町の裏通りのわびしい家の軒先に古い蜜柑箱に柏えられているのを見かけるのだが、日本では待遇の悪い花といえる。10年ほど以前から突然とあらわれて、一時は流行花の様になった「ストレチア」。極楽鳥花という日本名もあって、いけばな展など必ずといってよいほど、材料に使われたものだが、これもいつしか流行らなくなって、今日では平凡な花、と考えられる様になった。但し朱色はだめだがオーガスターという白花の大輪咲きのものは、今日でも魅力のあてゆく。明かんなる面白い花である。これとは反対にこれも10年ほど前からあらわれた初夏の花でトルコキキョウ、形の悪い花だったが近年は栽培がよくなって、姿もよくなり紫の花色が明る<、今日での流行花の様になっている。。ハンジーを切りばなにして花材に使いはじめたのも十数年前。そのころは茎も短かく使いものにならないというころ、私が花展に使いはじめたのだが、ようやく栽培がよくなり毎年晩春には花屋の店先で切り花として売るようになった。そのはじめは東京の花屋で寸法の長いのを見たのだったが、京都では。ハンジーの切り花など見られないころだった。かきつばたと姫百合は日本の代表的なよい花であるのに、最近、段々と品質が悪くなり、実にあわれな花になり下っているのは残念に息えてならない。これも最近になってのことだが、以前は豊かに咲くかきつばたが見られ、開花後も二日程度はしっかりと形を保っていたものだが、数年以前から、これは多分、野性種を作りかえたものと思うのだが、花も小さく開花してすぐ花弁が垂れ下る様な、わびしい姿となる。数年来注意しているのだが、10年以前のかきつばたとは品種がすっかり変わって悪くなっている。姫百合も昔のようなFl持ちのよい葉も美しく、はっきりと咲いた花を見ることがなくなった。まことに残念な思いがする。12

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