テキスト1978
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c銅器に活けたカキツバタ。これは瓶花である。この花器は上の皿が平らなので「薄端」ウスバタ、という古い形式の花器で、大体は生花用の伝統花器である。この形は「玄猪」ゲンチョ、といって古典的な供えものの台を花器にうつして作った、といわれている。この花器にカキツバタを一種、なんとなく化花にみえるが、葉も自然風に楽々と組んで淡泊に挿し込んだ瓶花としての作品。平らな皿に水を悩りこむ様に入れ、業影が水に写っている状泡はまことに所らかにみえる。花器の品位とかきつばたの清麗さが調和した作品となっている。簡かの美ともいえる美しさが、この作品の中にあると思うのだが、これは自画自賛かもしれない。生花としてこのカキツバタを活けるのもよいだろうが、瓶花として自然風な葉組みで挿してあるのも、また面白い風景である。cカキツバタ三月号からテキストがおくれている。三月のいけばな展のとりこみで書く時間がなく順ぐりにおくれたのだが、このおくれをとりかえそうとどんなに思っても、一度おくれると三か月ぐらいしないと中々もとへ戻らない。どうにかこの六月号を「六月五日ごろ発行」というところまで追いついたので、やれやれという次第である。普通、花を活けて写真にとりその写真が出来上るのに約五日、すぐ写真と原稿の割りつけレイアウト一日、原稿沓きが二日間、それから印刷所へ廻して出来上るのに十五日間かかる。発送に二日かかると、すべて合せて二十五日間が必要ということになる。そんな次第で、その閤に花展や旅行などがはさまると、それだけ延長ということになる。人まかせに出来ないテキストであるだけに、いたずらに心ぜきに息うだけでどうにもなりません。内容のしっかりしたものを作りたい、よい花を写真にとりたいと思う心はいっぱいなのだが、つくづく雑誌屋というものはいそがしいものと思っばかりである、すきでやりはじめた仕事だが、百八十号(15年)という年月をふり返ってみて、よくつづいたもの、としみじみと思うのである。7

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