テキスト1978
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専渓水辺に咲く五月の花。ハナショウプの紫とコウボネの黄色のはな、濃い緑の葉、初夏を迎える季題の花といえる。黒い掲色の水盤に活けたこの二種の花の中に、やがてくる夏の詩趣を感じるのである。の1輪大輪が美しく、引月の花を代表この6月号の写真は5月10日に活けた作品である。五月の花材は春の花が終って夏の花とのそのうつり変りの季節であって、草花の類の多いころだが、さて、いけばな材料にはあまり特徴の少い面白くない季節といえる。木ものはまだ若葉が柔かく自然の景色の巾では新緑が美しいのだが、切りとった枝葉は若葉も郊々しくはっきりとした個性がない。草花はカキツバタ、ハナショウブが代表的な花といえるのだが、上句のボタン、コデマリ、シッジのかんほくの花がすぎると、初以らしい感じのウノハナを見るようになり、水草のコウボネ、スイレン、フトイなど例年の様に、私逹の花材の中に顔をみせる。シャクヤクの白と紅花する鍼旅な色彩と豊かさを感じるのである。早仕栽培のキキョウ、ササユリなど初夏の花も見るようになるが、まだ花も剥々しく、6月に入らないと本調子といえない。とにかく、5月は花の秤類が多いのに、はっきりとした花が数少なく、活けるのにむずかしい季節といえる。端境期(はざかいき)ともいえるのだが、むし料い気候の中に柔かい若葉の花葉を活ける五月のいけばなは、四季の中でもいちばん活けにくい季節といえるだろう。六月に入ると花葉もかたまり、はっきりとした個性のある花をみるようになる。初夏のはな毎月1回発行桑原専慶流No, 180 編集発行京都市中京区六角適烏丸西入桑原専慶流家元1978年6月発行しヽけばな

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