テキスト1978
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ゴボウシュロチクヒマワリR褐色のゴボウの根っこ。これにシュ本、黄色のヒマワリ。変わった配合である。ゴボウをいけばな材料に使うのは初めてであるが、用い方によっては面白い感じが出ると思う。下手趣味の材料かと思われるが、これも―つの工夫だろう。ロチクの葉2梅から桜へ三月、四月の花木の季節をすぎると「かんぼく」の季節になる。雪柳、こでまり、つつじの様な種類であって、低い木ものの花だが、これが四月下旬から五月にかけて咲き、この季節からいけばな材料もすっかりかわり、特徴のあるシーズンということになる。八璽山吹が終わると単弁の山吹が咲き、渓流にそうて新緑の中に黄色の花を咲かせることになる。それと時を同じくしてシャガの花。やがて牡丹、シャクナゲ。カキツバタの栽培種は四月より咲きはじめるのだが野生種は五月中旬より股村のあぜ道の小川などに点々と咲きつづいて流れ川のゆくままに杜若の花も水に運ばれて行く様に思われる。あるいは林間の池沼など思いがけなくも杜若の紫の花が群がって咲いているのを見つけて驚くのだが、このごろ花屋で買う杜若は野生種のものらしく葉は短かく硬く、すがた形はよいのだが、咲くとすぐ花弁がだらりとして駄目になってしまう。これは野生種のつくりかえの品種だろうと思うのだが、とにかく以前の様な良質の杜若が見られない様になったのは淋しいことである。うのはなの咲くのは五月、まっ白の花が山間渓谷に咲きつづく。卯の花のこぼるる蕗の広葉かなと、蕪村の句にあるように、梅雨の委節までつづいて、やがて夏のそのはじめを彩るのである。卯のはなには白花、淡紅の花、また庭に咲く白と淡紅の色を交えた「はこねっつぎ」など、種類も多くその花茎がうつろ木であるうえに、これをうつぎ(空木)と名づけたといわれる。うのはなの匂う垣板に時鳥はやもきなきて忍音もらす夏は来ぬと、歌詞にある、古い唱歌を息い出すと、初夏という季節感をしみじみと思い起すのである。箆百合の咲くのは八月のはじめ、いけばなの材料として四季の中でも最も好ましい花だが、やがて百合のシーズンヘ入り、自然で咲く山百合のいろいろを見るうちに、いつしか夏の季節の中へ入ってゆく。野生の草に「のびる」というのがある。ねぎ、にらなどの同じ種類のものだが、私が採集したのは五月の末、京都桂川の河原だったと息う。のびるは八月に白い花を咲かせるというのだが、五月のそのころ野びるが三〇センチほどものびて、強い川風に打たれたためか、茎がくねくねと曲がって実に面白い形だった。これを百本ほども採集して、他の花をつけて花展に出品したことがあったが、変わった作品が出来たのを今におぼえている。自然の材料をみつけだし、はじめて出品作の中にとり入れたことになる。R 8

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