テキスト1978
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三月の桑原巧慶流展を見られた方は、すでに感じられたことと思うのだが、私達の活ける盛花瓶花は形とともに色彩に深く重点をおいていることに気づかれたことと忌う。桑原専慶流のいけばなは色彩的である、ということはすでにが、白黒のこのテキストを見ても、その配合を考えると理解が出来るに辿いない。皆さまへ送った案内状でも、こんな点について配慰しているつもりである。案内状の銀色、濃赤、オレンジ、黒などの色調は、そのまま花展会場の装飾にも同じ色を使って構成したのを気づかれたであろうか。京部市バス(全車)の中づりの花辰広告も同じ系統の色刷だった。今さら宣伝するわけではないが、花を活ける人達の多くが、形を作ることには中々注意をはらうのだが、色調には研究が足りない様である。さて、別の原稿において、五月の花はなるべく清楚であるように、色彩も淡泊であるようにと書いた。このテキストの作品を見てもほとんどの作品に、淡泊な感じの色を使っている。意識して花材を選んだわけではないが、晩春の季節には淡彩的な花が好ましいし、緑や白の花材が適している、と思う心がこんな配合になったことと思う。私のこの机には白花のボケ、テッセンの白の二種の瓶花が置いてある。テッセンの緑の葉が新鮮で美しい。黄色のレンギョウに黄色大輪菊、紫木蓮の開花に紅椿、こんな同色の配合も意外に新鮮に感じられるものである。一般に知られているのだR細い直線の若木が上方へのび、これが数そろえて立つ形はいかにも新鮮な感じをうける。色は淡黄色の若葉。これに黄色の大綸菊を5本とりあわせ、二つの花材の立体型を左右に組み合せ上方へのびる花形に作りあげる。花器は渋い藍色の医案のある伊万里焼。古い陶器なのでしっとりとした落若きが感じられる。盛花や瓶花の形には上方へ立つ花形、横ひろがりの花形、それぞれ材料の個性をよく考えて、その草木が引き立つように、枝を離して立てることもよく、草花の大輪咲をあつめてかためるのも花を引き立て色彩を強く表現するのに役立つことにもなる。作者の意思のはっきりと示すことの出来る、そんな工夫が必要である。いつの場合でも必要な考え方である。R さんざし黄大輪菊4

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