テキスト1978
21/146

大きい壷、濃緑色の陶器である。強い調子の瓶花を作ろうと考えて、材料にハンノキの褐色の実つきの枝、浪亦色のバラ、大輪咲の開花とつほみをとりまぜて挿し入れる。色に菫点をおいて活けた花である。濃緑のバラの葉がたっぷりとして花器とのバランスをとっている。左方を重く右方に軽くハンノ木を入れて、低く広く花形をつくる。棗放華膨の中に新鮮な感覚のある花といえるだろう。R30センチ四方もある箱の様な形の花展の出品作として、広いホールの装飾として適した花と思うのだが、いけばなの中には、その所と用途をよく考えてそれぞれに効果的な作品であることが必要である。この作品は個性の強い作品といえる。これに比較すると、この下に掲載のアマリリスの盛花や、前ページのアイリス、ユーカリの瓶花は写真では同じような大きさにみえるのだが、%ほどの軽やかな作品で、瓶花盛花には清楚な花もあり、強く重厚な作品もあって、それぞれ性格を別にすることを知らねばならない。アマリ、リス桑原隆吉作ハボタンc水盤に活けた梅の生花。まるい輪の花留具を用い、くばり木をかけて活けてある。ほとんど苔梅を材料に用い、胴、副の部分、控の部分だけ別の梅をあしらって形をととのえている。技巧的に優れた作品であり、古木に対する若木のあしらいは、それと見えることのない様に老木の挿し合せの様に作りあげてあるところは全く完全な作品ということが出来る。水ぎわの処理も美しく、ことに前置の位置に低く前方へさし出た一枝が(みずぎわ)を切って美しくさし出ている。この水ぎわの一枝は作者の工夫のあるところで、中々意匠的に美しい。右方へ出た副も長さをつめて留との均衡がよい。奥行きの深い花形で、写真ではわかりにくいが、この作品の中でいちばん問題になるのは真の長さである。実際で見たときそれほど感じなかったが、写真になると真の高さがすこし過ぎて、ちょうど真のまん中より少し上部の小枝のない部分が長すぎる様に感じられる。水盤の花は筒や壷よりも低く形づくるのがよく、この水盤生花は真の高すぎるのが欠点である。7 \ /1.-~ ,r J @

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る