テキスト1978
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対ページの「あせび・つばき」の作品もこの「バラの実・白菊」の作品も、共通していることは材料に使っている葉ものの「面」と枝ものの「線」の組み合せである。これは瓶花盛花の中心的な考え方であり、もちろん「葉もの」だけの取合せ「枝ものの線」だけで構成する考え方もあるが、一般的な考え方としてまばらな線の形、たっぷりとした葉と花のうるおい、これによって配合されることが多い。したがって、この個性のある材料をどんなに選択配合し、またそれによってどんなに花形を構成するか、というところに作者の工夫がありその優劣が生まれてくる。瓶花盛花は型ものではない。一作ごとに作者の考案が必要であり、しかも、よく見せるという要領のいい表現と技術が必要である。緑の少し残った朱色の実、これはバラの実である。古雅な憾じが白菊の大輪と調和がよい。足もとにりんどうの残花を添える。掲色とさびた青色の花。葉が紅葉している。この三種の配合は晩秋初冬の花として季節感があり形も色も落料きのある感覚で、しかも明るい姿をもっていると思う。この盛花は対。ヘージの「あせび・紅椿」とともに佳作といってもよいだろう。形を作る技巧もむずかしいが、まず材料のとり合せに深い注意が必要である。よく見せるためにはねらい所をはっきりさせて、しかも要点をよく掴んだ考え方が大切である。この作品は花器の小さい割にかなり大きく入っている。側面図を見るように後方深くのびのびと材料を使っている点、奥深い花形である。ばらの実白菊りんどう⑧

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