テキスト1978
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専渓かきつばたは四月中旬から五月へかけて咲くのが普通である。しかし栽培の早咲きのものは三月に入ると見ることが出来、30センチ程度の若葉に短い紫の花をみると、いよいよ春のシーズンに入ってきたことをしみじみと感じるのである。農村の田畑にそうて流れる小川や水郷の村落に野生のかきつばたをみかけるのは五月の春も終りのころ、水辺を彩るかきつばたの紫には「日本の春」の、その春の色彩を深く感じるのである。やがて季節を終って七月に入るころ、返りばなのかきつばたが咲く。また、夏がすぎ初秋の頃に咲くかきつばた、十一月の中旬ころから十二月に入るころまで返り花を咲かせるのを、私達のいけばなでは「四季咲きのかきつばた」といって、その情緒を作品の中にあらわそうとする。春は四月、夏は七月、秋は九月、冬は十一月から十二月へ入るころまで、この季節それぞれの風情をいけばなの中に表現して、それぞれの季節の風姿を見せようとする。これが伝統の生花の中の「四季咲き」の活け方である。初春のかきつばたは花低く、夏は花を高く用いること、秋には実の面白さを加えて葉組みも荒く強い風情、冬のかきつばたは枯れ葉の風雅さを加えて初冬の情趣をうつして活ける。かきつばたは四季の花材の中でもことに趣味の深いものだが、盛花として活けるのも中々面白い。盛花毎月1回発行桑原専慶流11月の下旬枯れ築の中に紫の花を咲かせるかきつばた編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元盛花瓶花の前後奥行きについて考えよう1978年12月発行No. 186 しヽけばな

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