テキスト1978
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十一月から十二月へかけて咲く牡丹を「かんぼたん」という。返りばなの牡丹だが、雪の降る頃まで葉の落ちつくしたほくに添って低くわびしい花を咲かせる。昔から風雅な花とされ珍重されるところだが、生花に活け、瓶花にも活ける特殊な材料である。渋い好みの壷に首短く一輪の花に葉を添えた風情は、床の間の花として品格のある高雅ないけばなといえる。最近、栽培もよくなって花も葉もたっぷりとして美しい姿をみるようになったが、これも、佗びしければこそ冬の牡丹の味わいがあり、春の牡丹のように華やかに咲く様になっては、その幽雅な風情を失うことになる。この写真の寒牡丹は花も葉も美しく、黒く褐色の手附篭に入れた投入れ花だが前後に掲色のぼくをあしらって、冬の牡丹らしい感じを見せた小品の花である。晩秋初冬の季節感のある瓶花といえる。.. Rすいせん、ばらの濃赤淡紅、紅葉のある寒菊の三種を配合して盛花を作る。十一月の下旬から十二月へかけての花である。基本形の温和な花形だが色彩的にも美しく新鮮な感じの花である。最近のすいせんは栽培の関係からか花首が長く形が悪い。一本のうち花首の長い房だけ一輪ずつとり去って活けたが、昨年あたりから水仙も姿が悪くなり、春のかきつばたの品種が悪くなったのと同様で、困ったものと思っている。紅葉の寒菊は一般に「ぢかんきく」といって、つぽみの堅いころに紅葉し、その形と紅葉の姿に風雅な感じがあり、初冬の趣味の花として愛好されるのだが、紅葉の寒菊は水揚げが悪く期待はずれをすることが多い。必ず足もとを焼くか熱湯につけて冷水にうつし、そののち活ける。寒菊は茎に雅趣があり下葉をとり去って活けるようにする。c鶏頭(いちょうけいとう)の淡黄色二本、濃紅色一本を高く挿し、淡い灰色の壷に活けた瓶花である。晩秋の感じの深い花といえる。この瓶花は上方が細くまっすぐに立ち、下部には椿を左右にひろげて対照的な形を作っているところに特徴がある。どの瓶花盛花の場合にも花材の枝葉花の形がよいことは、いうまでもなく大切なことだが、同時にその枝葉によって作られる「空間」すきまの形、これが花形を作ることになる。この白椿は左右にのびた枝葉と前方低く垂れるようにさし出した枝葉、その椿の枝によって空間が作られており、これが花形に変化を見せている。盛花瓶花の場合はどの作品も同様、あらゆる空間によって花形が構成される大切な技巧といえる。花瓶の前に垂れる枝葉は、壷との調和に重要な役目をする。白椿を下部にひろげて入れる。R4@

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