テキスト1978
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そうかんざくら一種R寒桜(かんざくら)を活ける。これは十一月一日の梓の会の作品で少し変調な花形だが面白い形なので掲載することにした。寒桜は返りばなの桜であり、その風情のわびしさにもち味があるのだが、最近、外見の美しさからか一重咲きが少く、八重咲きの賑やかな材料が花屋に多く出廻っている。寒桜は花のわびしげな姿が好ましく、春の彼岸桜のようなのは感心しない。この作品は右勝手行の花形の様に見えるが、左方に立つ副(そえ)が普通の場合とは思い切って長く上方にのびている。研究会の作品なので変った調子を作ったのだが、控も高く、真の右方に内副(うちぞえ)を入れ、その他すべての調子が大きく流暢な感じで「草」の花形に入る生花といえる。生花にはやさしく静かな美しさを見せる作品もあり、また、ひろやかに流麗な形に作りあげる作品もある。花材にもよるのだが、これは強くひろやかな性格をもつ作品といえるだろう。十一月脱秋のころから、春四月、桜の終わるころまで、生花の材料として木ものを活けることが多い。四月かきつばたのころから、夏の草花、秋の菊のシーズンまでは主として水草と草花、ことに九月の秋草など、生花の材料に草花が多いのだが、冬から春への木ものにも、初夏から深秋までの草ものの季節にも、それぞれの個性があり、ことに生花の場合には、葉組みもの、草もの、水草もの、細もの、ほくもの、という様な材料の個性によって挿花法が異なり、また約束があり、その形式によるが故に生花の美しさをあらわすことが出来る、という特徴をもっている。十一月より十二月は冬の花材のはじめにあたり、寒桜、あかめやなぎ、梅、行季柳、猫柳、彼岸桜、木蓮、桃、里桜、さんしゅう、れんぎょうといったように、いわゆる「木もの」「ぼくもの」のシーズンに入り、生花の練習のために最も効果的な材料の多い季節なのである。木ものの生花右勝手草の花形3

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