テキスト1978
114/146

簡単に活けられるということはお粗末でもよい、ということではありません。小さくとも見る人の心を引きっけるようないけばなのエッセンス、洋画の中にガラス絵という小品がありますが、小さくとも小さい絵であるがゆえに、心を引きつけるような美しさ、それが必要なのです。色とか形とかそんな外形的なもののみではなく、しゃれたアイデアと新鮮な感覚、新しいスタイルがあるという、そんな作者の工夫が作品の中に欲しいわけです。見る人の心を引きつけるような花、小さくとも感動を与えるような花でありたいのです。小さくとも宝石のような花であること、それを作る考え方と技術が必要ということになります。ここに20作の写真をならべましたが、決してそんな優れたものではないにしても、その考え方を汲みとっていただけると思います。椿一種、山菊一種の様に日本趣味の中にも、洋花の小品にしてもその考え方はどれも同じなのです。したがって、これらの小品瓶花の花形は中作大作の花形のバランス、空間、高低前後、奥行の深さなど、同じような考え方で作っていきます。場面が小さいために大きい花よりもかえって難しい、ということもありうるわけです。また、小さい花であるが故に精密な技巧が必要である、ともいえるし、したがって小品花は簡単だという考え方はなりたちません。Rこの手つき花瓶には紺、淡青、褐色、淡黄の彩色罠案があり、外国陶器の味わいが深い。これに紫色のトルコキキョウ一種を入れる。花器の感じに調和するように、軽やかな調子を考えて入れた。Rこれも外国趣味の陶器である。黒褐色淡褐色の単純な色調の花器だが形が明るい感じ。紅色のバラ一種、開花を選んで活けた。上方を低く左右へひろげた形が花器によく調和していると思う。トルコキキョウR淡紅色バラ(高さ55センチ)(高さ35センチ)ヽ4R R R 伽瓢

元のページ  ../index.html#114

このブックを見る