テキスト1977
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R烏丸六角というと京都のまん中のそのまん中ということで江戸時代からの道標が附近にあり、ここを出発点として距離を測ったという、そんな旧京都の中心なのである。したがって附近には旧家が多く、その家屋の中にはこの写真で見る様な古い設備のある家も多い。黒くさびた褐色の階段を棚に応用したもので、戸時代からの生活の約恵ともいえる家屋楠造の一部である。今ではほとんど少くなって私の家のものが珍らしい、といわれるのだが、この階下の隅に高卓を樅き、白い花瓶に白花のてっせん1本を挿して飾りつけた。あたりが黒く渋い調子なので、白の花瓶と白い花がよく引き立つ。「棚階段」といい、江る。床の間と迩い棚をふすまでおおいかくして、いけばなを置いても引き立つ様に白い紙の襖を入れた。庭に面した縁がわの紙障子四枚をとりかえ左右に一尺五寸の細い障子をはめ、いつも開け放しであるが、庭に而して大きいガラス戸4枚で光c最近、改造した階下の部屋でありが充分入る様にしてある。縁側の右隅のカーテンの中は書棚で、主として古典書簡の類を入れている。桑の木で作った横長の卓(しょく)に白泥色の花瓶を箇き、紫菖蒲一種を活ける。バックの白が花を引立てている。六帖の部屋にはこんな清楚な花がよく似合う。5棚階段

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