テキスト1977
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Rスタージスは誰でも知っている平凡な花である。五月から六月へかけて咲き世界中にこの仲間が旧種ほどもあるといわれている。地中海沿岸地方に野生するものがその原種らしく、一年生の草花だが中には低木の様な木質の種類もあるということである。いけばな材料として特に好ましい材料ではないが、季節になるとどの花屋でもいっばい見られる大衆的な花なので、これをどう活けたらいちばん感じよく見られるかと考えるのも研究の一っであろう。写真の材料は紫花の八重咲きで茎もかなり太くしっかりしている。新種らしく茎の形が面白い。数多く手に持ってみると普通の草花にない特徴が感じられるので、その直線を数多く揃えて花器から立ち登らせるところに目標をおいて、長方型の花器を選んだ。横列にならべるように挿し、出来るだけ茎の変化をみせるように考えて活けた。美しい花ではないが、匝線の面白さをみる盛花というところである。Rカスミソウ(学名11ギ。フソフィラ・エレガンス)は中央アジアコーカサスが原産地で主としてアジア、ヨーロッ。ハ、アフリカ北部に75種の仲間が自生しているといわれる。昭和に入ってから日本に入ってきた草花で、その花の感じから「カスミソウ」という日本名がつけられ、五月、六月のころに小さくやさしい感じの草花として大衆的に好まれる花である。四月下旬に咲く早成白花のものは感じもよくないが、五月に入ってから見る淡紫色の宿根カスミソウは好ましい。この写真にあるのは「カスビア」と花屋でいっているのだが、とにかくカスミソウの中の一種らしく、形もよく水楊げのよい稲類である。この瓶花のまん中に高く挿した太い線状の植物は、ヤシの花がらと私達はいっているのだが、ヤシの大きい花の中心部に発生する花序だろうと思う。「肉穂花序」とでもいうのだろう、その枯花の奇なる形とカスミソウの軽やかさ、モンステラの緑の葉、この三種の配合は、培想も変わっていて、渋い好みの中に新鮮な感覚がある。c近頃は熱帯植物の乾燥材料が入ってくる。。フロテアの種類を二、三種おほえたと思った頃には、枯花だか実だかわからない様なものを見る、といった様に私ども花道家の範囲では見当のつかない様な材料を活けることになる。植物図鑑をしらべながら書くのだが、植物に関する知識のたりなさを痛切に感じる次第である。さて、cの盛花は淡紅色のコチョウラン(ファレノ。フシス)にモンステラの葉2枚、この二種はいわゆる甘い材料で、平凡な取合せなのだが、これに右方の枯花を添えるとぐっと渋くなり、この盛花に強さを増すことになる。この枯れ花の名前がわからない。花がらではなく、がくの落ち残ったものが茎についてそのまま枯れたもので、その形が中々面白い。盛花としてはこの枯れ花をあしらうことによってこの作品の位慨を高くすることになる。配合というものは中々むずかしいものである。c コチョウランモンステラ枯花(名不詳)3

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