テキスト1977
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専渓きのう北海道から帰ってきた知人からミズバショウとザゼンソウをいただいた。二種の花に葉をそえておおざっばにひとくくりにしてあり、中には葉も少ししおれていたのを、とりあえず水切りをして葉を押しひろげるように丁重に活け上げてみると、ようやく勢いをとりもどして、すがすがしい姿になった。この水草は、栽培がきかない野生の花で、尾瀬沼というとミズバショウといわれるように、近頃、若い人達の間でのあこがれの花ということになっている。ミズバショウはカユウによく似た水草だが四月より六月こ東北地方から北海道の池沼に咲く10センチ程度の渋い花弁の中80センチ程度の広葉で、バシろに咲き、長さ40センチ||ョウの葉に似ているのでこの名がある。ザゼンソウも東北地方、北海道の野生の水草で黒褐色の花弁が包皮状の形をして立ちに万年青によく似た実が立ち登って見える。ちょうど禅僧が座禅を組んでいる姿を連想してこの名がつけられた、といわれるのだが、この写真の右に挿したのはミズバショウの花と実、左方の黒くみえるのがザゼンソウの花である。大きい黄褐色の水盤に水をたっぷり入れ、その清らかな水面に影をうつして立ち上っているザゼンソウとミズバショウ、中央の大きい葉はミズバショウの若葉だが、前部のミズギワに挿した草の葉はホトトギスの若葉で、この三種がみずみずしく、そして水辺の草花らしい梢紹をつくり出している。五月になっても残雪が白くその渓谷の水がやがて麓の沼を満たす様になると、ミズバショウやザゼンソウの花が咲く。私はその情景を心に描きながら、この盛花を作った。毎月1回発行桑原専慶流No. 168 囁編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1977年6月発行しヽけばな草喜座ざ禅t

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