テキスト1977
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いけばなは装飾のためのものである。技巧のないつっ込み挿しの花も花器に挿してある以上はいけばな、ということが出来るし、日本の伝統形式の技術的ないけばなには多くの種別があり、それぞれの形式があり、また技術がある。前ページに意匠的な作品について触れたが、意匠は活ける人の美術的な工夫のあらわれであり、これが古い形式を借りて雅趣の中に面白い若想をいけばなの中にあらわそうとするものもあり、また現代的な新しい工夫のもとに美しいいけばな的意匠を作ることもあり得る。その時代の思想趣味によって種々な作品が生まれてくることも当然であり、正統派のいけばなとは迩った面白さ美しさがみられることにもなる。純日本風な意匠もあり、外国の趣味をとり入れた意匠的いけばなが作られるのも、また当然のことである。このページには今日的な新しい工夫によって作られた作品3作をならべてみた。「いけばなの装飾性」ということを考えると、その用途によって、その場所によって作品自体にも変化のあるものが必要であり、一般に作られている瓶花、盛花とは飛躍した考え方が望まれるのも当然であろう。Rの作品は、石膏で作った造形だが、三つの足で支えた奇形の石宵像の各面に布を貼り各面に淡青色、赤色などの着色をつけて、この造形物に花を添えて個性的な装飾物としている。ウインドーの装飾として、洋風建築の装飾として使ったら、と考えている。R石背と布による装飾造形(花・アンスリーム)Rこの作品は而白い形、新鮮な感覚、美しい色調、それを考えて作ったのだが、それが何をあらわしているのか、何の形をあらわしているのか、と考える必要はない作者の私も何の姿をあらわそうと考えて作っているのでは決してない。この作品から何か新しい感覚が生まれること、また装飾物として美しいものであること、面白い変わった形の装飾物であることを考えて作っているので、花を添加しているが、花を添えなくともよい。この石膏像自体に色彩が施されてあるのだから、変化のある色調があり花がなくともよい、という訳である。石行の上に貼りつけた布は、ジー。ハンの服地を切り裂いて貼りつけたもので布地の面白さと、ラフな感じの布へ塗りつけた油絵具の調和の而白さを考えてみたのである。と褐色の枯れ葉、別にアンスリームの濃緑の広葉1枚を横に倒して添えた。単純ではっきりした色のとり方である。型を作る。石脅を幾度となく塗布し形を作って行く。小刀で削りとって前後左右の各面の段差をつくる。技術的に仕上げるのだ、小細工はしないことである。びたものを切り離して貼りつける。ズボン一培分で充分である。油絵具を油でといておもむろに塗りつける。黒と赤を場所をかえて塗布する。添加した花は白花のアンスリーム2本木片で原型を作りラスを貼りつけて原ジー。ハンのなるべく使い古した色のさ4

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