テキスト1977
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c cアマリリス、温室や暖地の早生栽培では三月から見られる材料だが、アマリリスがその季節の五月に蕗ムギ地で咲くのをみると、豊かに派手やかな色彩で、感じる。アマリリスの強い色にとり合わせてムギは五月の花材である。「夜会服を秤る女」といった艶やかさをムギの緑は、清爽な五月にふさわしい配合だと思う。取合わせというものは中々むずかしいものである。色の強い単純な花には、細い線をもつ緑の葉がふさわしく、これに花ものを添えると、しつこく下品になりやすい。c 日本のいけばなでは、カキツバタの花と葉、ツバキの花と葉、バラ、ユリ、キク、ハス、コボネその他どの材料でも、その花にその葉を添えて活け、花と葉が別になっている材料でも、その二つを添えて活けるのが普通になっている。最近、カュウは花だけ他の材料に組み合わせるのが普通になっているが、ハナショウプの花だけ、というのはほとんどないだろう。日本のいけばなは自然の姿のまま、花瓶にうつすというのが原則になっており、花の美しさとともに葉の美しさに心をひかれる、というのが日本人の自然観で、これがいけばなにも及んでいるのである。ことに新緑の緑や、晩秋の木の紅葉、草の葉の紅葉に季節のうつり変わりや、詩的な情緒を楽しむという、さび幽玄の境地まで考えると、花の外面の色彩観以上にもっと深い感懐を花に寄せるのが普通である。花の過ぎた時期を葉桜といい、街路樹の黄色い落葉に初冬の情趣を深く感じるのも日本人の独特な自然餞といい得るだろう。外国(主としてヨーロ見方は花は花、葉は葉の外観の形と色彩に主点をおくようである。外国様式のプーケー、コサージの作り方をみると、美しい花首に他の観葉植物の葉を添えて形を作るといった様に一種の花と葉をそのまま見るという場合が比載的少ない様に思われる。゜ハリで見たグラジオラスの壷挿しや、ゼラニュームの鉢の窓飾りなど、花と葉をともに飾るものもあるが、これが技術的な装飾花となると、別の葉を添えて形を作るという例が多い。花と葉に対する外観装飾的な外国様式と、自然観に重点をおく日本のいけばなとは、趣味的によほど違うように思える。ッパ、アメリカ)の花の花と葉アマリリス11

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