テキスト1977
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生花、瓶花、盛花のいずれの場合でも、花形の左右長短、高低の浮き沈み、前の出、後方の奥行きがどの作品の場合にも必要な条件となっている。このテキストの掲載する写真の場合、前後、奥行きが中々わかりにくい。いけばなは立体的であることが普通であるから、写真ではある程度あらわすことが出来ても、立体感の真実という点では到底あらわしにくい。瓶花、盛花の場合、作品の前後が30センチなれば横はばも30センチ、と凡その前後左右を示すのが普通になっているのだが、これは最低の奥行きの一例であって、理想的には横巾左右が30センチなれば前後、奥行は45.センチ程度がよい。奥行きの深いほど、前の出ているほど、よい作品が作れることになる。真はいつも何方へ傾く様に形を作ること、ぐっとつき出るほど奥行きが深くなり、全体の調子がよくなる。控がまっすぐというのが普通の状態で、控えの1本はまっすぐ、控えの二本目はさらに奥深く後方へ出る、といった調子はよい花形となる。胴は前方正しく前へ出す垢合と少し左寄り乃至右寄りに挿し出す場合、いずれでもよいが長くつき出た胴の下へさらに短い枝葉のあしらいを一本入れると、胴の形がよくなり、前方はなれた場所から花を見る場合、瓶花、盛花の下部が形よく見える。前後に細い花を二種以上重ねると複雑になりよくないが、例えば後方にカユウ、ハナショウブ、テッポウユリの様な大輪花を挿し、これに重ねるように前方に、ナッハゼ、ナナカマド、サンキライ、青楓の様な軽い葉もの実ものを入れると奥行きも出来、瓶花全体に浮きが出来て、花がよくなる。花の前にある木の枝と葉、美しい重なりが必要。cRの記事で木のものに草花を添えるというのは考え方が古い、と私がのべている。これはこれまでの習慣的な平凡な材料による考え方をさすのであって、木の材料といっても、珍しい形のものもあり、豪壮な感じのものもあるのだから、一般的なお話ではない。たとえば、この写真の様に、大変面白い形のものがあって、これは実に珍しい材料で、こんな場合はまた別の考え方をもつ、という訳である。アカエゾマツにテッボウユリの配合、強く豪壮な感覚が見られ、広間に飾る瓶花として重厚な感じのものである。強い木の実にあしらいの花も大輪のテッポウユリがよく調和している。アカエゾマツアカエゾマツは平地の湿潤地や、やや高い森林によく見られるもので、湿(トウヒ属)原ではしばしば単純林となり、蛇紋岩地帯にも耐えてよく成長する。世界に約四0種があり、北半球の温帯に広く分布し、中国や日本に最も多い。(以下略)アカエゾマツ(分布11北海道・樺太・南千烏)球果は円柱形、長さ五ー八cm(原色日本樹木図鑑ー保育社)よりアカエゾマッテッボウユリc

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