テキスト1977
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R白桃に白花フリージャの配合。普通ならば白桃に紅椿というところだが、白に白というところに作者の考え方がある。洋花のねじめというところは、そんな変わったことでもないのに、白花フリージャがこの生花を引立てている。この白桃の花形は真の形だが、真と副を上方に立てて直上させた花形が変わっていると思っ。フリージャのあしらいは少しむずかしいが、活け上げてみると意外に調和がよい。この花形と花材の配合、少しのエ夫ですっきりとした感じに見える。必要な場所に必要なだけ入れる。びしっとした鋭い調子が新鮮な感覚を生むことになる。沢山の分量を重ねて美しい造形美をつくることも生花の技術だが、また反対にこの様な単純さも見る人達に美しさを感じさせることになる。―つの行き方である。日本の花には日本の味わいがあるように、洋花には洋花の味わいがある。生花に洋花を加えて、生花の技術の中にまた別の感じを生み出すのも、今日の生花の行き方(生花であろう。勿論、洋花のあしらいを技術的にうまく挿し添えることが大切だが。桃は二月ごろから温室咲きのものが出廻っている。初めのころの温室桃は花が落ちやすく、花を落とさないで花形を作りあげることが生花の技術といえるのだが、三月下旬から四月に入ると花もしっかりして落花せず活けやすくなる。四月は自然咲きの季節で、白桃の中に「残雪」という種類、「童児」という八重咲真紅の花、「源平桃」という紅白交色の桃など、花も落ちず活けやすい桃の種類である。)白桃フリージャ花器に使う竹の筒には、マダケ、モウソウ、ススダケ、ハソチクなどが多い。マダケは細いが光沢、色つやなど気品があって、竹器の中でいちばん優れている。モウソウチクは太くたっぷりしており最も多く使われるのだが品位に乏しく花器にしても上品でない。なんとなく俗っぽい感じである。竹器には中筒(おとし)を入れて使うのが理想的である。乾燥した竹器へ水を入れると内部がふくらんで、外皮が破裂することがしばしばある。五月ごろがいちばん竹器の割れやすい季節であるから注意したい。常日頃あまり使わない竹器に、急に水を入れると内部が膨脹して外皮が割れる。これに対する注意は使用の前に花器全体を一時間ほど水につけ、竹器を水になれさせてから、その後、この竹器を使う様にすることが必要。初皇の頃は特に注意することです。薄い銅板で作った中筒をはめこんでおけばほとんど安全であるから、竹器を買えばすぐ落しを作ることが必要である。理想的には古い竹、年を経たよくなれた竹で作った竹器が最もよい。「すす竹」は風雅で花うつりがよい。品格もよく、あまり太いものがないから清楚な感じで花うつりもよく好ましい。最近にはすす竹というものが殆んどなくなって(自然のよくなれたすす竹)、薬品で色付けしたものが売り出されているが、これは品格が悪く感心しない。風雅というものは自然と切り離せないもので、イミテーションからは野趣や風雅は感じられないものである。竹器はすべて素朴な味わいの中に価値があるのだから、浅い智恵で工作した近頃のものはどうしても、真実に及ばないのは当然である。... 3@

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