テキスト1977
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たけなわ歳時記では春の部を三つにわけて、早春、蘭春、晩春の区別をたてている。早春は二刀、梅、沈丁花、さんしゅう、猫柳、おおばい、ふきのさとざくらとうなど、漸く春めいて咲き出す花や木の芽の季節感を挙げており、蘭春は三月より四月のたけなわの季節をさし、陽春の候というのがこの時期である。この季節に五葉松28日に生花を活けて、その写真15は桜、桃、かいどう、ほけ、木蓮、つばき、れんぎょう、すみれ、菜の花、桜草、チューリップ、フリージャなど、いわゆる春の花の季節をさしている。晩春は五月の季節から初夏へうつり変わる木々の若葉、水草の花の咲き出す頃をさしており、以上は自然の花の季節だがいけばな材料には温室栽培や早成栽培の花も多く、いけばなにはいけばなだけの「草木歳時記」が必要ということになる。とにかく三月から四月へかけては、四季の中でも花の多いシーズンであり、十日ごとに花の種類を送り迎える様な季節だが、この月のテキストには三月から五月までの花をとりまじえて生花と瓶花、盛花に活けて、その配合と扱い方を解説することにした。3月23日に盛花、瓶花を活け、作を掲載したが、そのうち生花は特に花材の分量も少なくして、淡白清楚な感じに仕上げて特徴のある作品を作った。ことに副材(ねじめ)の草花に洋花を使った作品が四つあるが、現代の生花といえる明るい感覚の作品であることに注意して欲しい。「清純の美」とでもいえる。そんな感じを考えた生花である。材料の分量が少ないからといって決して簡単ではなく、また別の技術の美しさを必要とする生花である。閑の春毎月1回発行桑原専慶流No. 166 編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1977年4月発行しヽけばな

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