テキスト1977
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R松、竹、梅の三種は寒中にも緑を失わずよく寒気に堪えるので、古来めでたきものとして祝儀の席の花として、この三種を取合せて活けることが習慣となっている。「歳寒の三友」ともいい、伝統の立花、生花の中にこの花形を定めてある。R図は、竹を真副、梅を駒と内副、老松を留に用いてある。竹は水ぎわ一・ニ寸の位置に節を見せることが定めになっている。株もとの左方水面の切り株は「砂摺」という。松竹梅はめでたい、というのが私達の常識の様になっている。これには伝統的な印象が深くて、現代の生活にはほど辿い古典の様な感じをうけるのだが、伝統いけばなの中の形式として残っているのだから、一応知っておく必要があると思っので、この月号に写真を作り解説することにした。祝儀に用いる染織衣裳の図案として、日本歌謡のめでたい祝儀曲の題名として多く松竹梅をとり入れているのは一般に知られる通りである。能楽「老松」の詞章を採って梅竹を加えて成文したものが多いといわれる。花道では、宅町時代に始まり江戸初期に完成した「立花」の中に「松竹梅」の扱い方をかなり厳しく定めている。「立華時勢粧」ー冨春軒仙渓ーの中に、松竹梅三瓶の事松竹梅の三耽は祝像の花にして、三瓶のならべ様、古来説々あり、まず一説には(中、竹)(上座、松)(下座、梅)かようにならぶる心は、松に相つづいて竹はめでたきものなれば左に立てる。また日<松竹梅の言業の序をもって座を定むるといえり。(梅二)(松一)(竹三)またかようにならぶる心は、梅は諸花の長にして、春に先だつゆえ花の兄とも云う、さるに依って左に立つるとなり、また日<松は四季ともに用ゆるを以って、梅は当季の珍花なる故、竹の上に立つるともいえり、当代多くはこの儀にしたがう。松竹梅の三瓶を一瓶によせたる時は、真は松、請は竹、副流枝などは梅を用ゆ。直真にも除真にも立てる。然るに予、この花形のこころをとりて、松のたぐい一色、竹のたぐい一色、梅のたぐい一色、この三色を以って外の草木をまじえずあらたに花形を指し分けして図に記す。箪曲、長唄など梅2R 竹老松(砂摺)

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