テキスト1977
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じげつふつきぐさ曇響疇攣「二月の雪、衣に満つ」ということばが謡曲弱法師の中にある。旧暦の二月は今の三月、この詞章は咲き匂う梅花の花弁の白が衣に落ちかかる様子を、美しく形容したものである。ようやく雪の季節を越えて南窓に梅花の初花をみる早春の季節感をよくあらわしている。自然咲きの春の花を待つ古い時代に比較して、は二月から三月へかけては温室花の最盛期で、華麗な花のあらゆる色彩を見ることが出来る。今日では2月7日に活けた作品である。よ私達のいけばなでは、自然のままに早春の若芽の浅みどりを風雅としてみつめる季節の花を活けることもあるだろうし、また一方、温室咲きの華麗な日本の花、洋花をとり交えて活けることもあるだろう。二月にしてすでに五月の花を活けるこのごろである。これが今日のいけばなの特徴となっているのだが、私達は、「二月の雪、衣に満つ」といった風雅にも、心を残すことだろうし、また漏室咲きのバラの華やかさにも新鮮な色彩を慇じるのである。ここに掲載した「ぽたん」の瓶花うやく咲きはじめた牡丹の早咲きの花だが、濃い紫赤色の大輪花に若々しい緑の葉、花器は緑色の明るい形をした陶器である。強い色彩を大きい花器にただ一っ、ぽつんと憧いた様な活け方は、花形というよりも色彩の美しさを感じさせることを考えた、そんないけばなということが出来る。牡丹は中国原産の花といわれるのだが、「富貿草」といわれるように皿笠かな感じの花であり、その皿芸かさを一輪だけ花器に入れるのが最も引きたつ花である。藤原忠通の歌に「咲きしより散りはつるまで見しほどに花の下にて二十日経にけり」とあることから、ほたんを二十日草(はつかくさ)と、いい伝えられている。早春の風雅専渓毎月1回発行桑原専慶流No. 164 編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1977年2月発行しヽけなば

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