テキスト1977
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秋は深く樹々は色づく専渓貴船菊を生花に活ける。貴船菊は秋十月に咲き、単弁白花と重弁紅花の二種がある。淡紅単弁の花もあるが白花のものが形も清楚にみえ品よく感じられる。直立した草花だが写真のように稀に曲がった茎のものがあって、用い方によっては中々面白い花が出来る。紅花白花をとりまじえて採集した中に茎の変わった形のものがあったので、すす竹の寸筒(ずんどう)を花器にして軽やかな生花を活けることにした。ポンボン咲きという黄色の洋菊の小さい花を留、控につけて活けたが、淡泊な中に色彩的にも調和よく貴船菊の品格が深く感じられる。伝統生花のいちばん好ましいもち味は、清浄な感覚、清楚な美しさ、その中にある品格、これが大切であって、華やかさよりも霊厚さよりも、簡潔な線条の美にその特長がある。竹の花器がよく調和するというのも単純な装飾のない竹器の個性と生花の個性が一致するところにある。形式よりも花材の個性をよく考えたあらわし方、生花にはそれがいちばん大切である。生花毎月1回発行桑原専慶流No. 173 きぶねぎく黄小菊(洋稲)編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専疵流家元1977年11月発行しヽけばな

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