テキスト1977
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美しいいけばなを作ろうと思うのは誰れしも同じです。ところが自分の作りつつある作品に対してその注意のしどころ、自分のいけばなのどこをなおせばもっとよくなるか、ということについては中々わかりにくいものです。花材の配合、花形、色調、また花器との配合、留め方の技法など、基礎的な問題は当然ですが、さてほとんど出来上った作品について、なお手入れするところはとこか、訂正するところはどこか、など最終的な注意については中々わかりにくいのが一般です。出来上った自分の作品をよく見て検討するわけですが、その見方にもいろいろ程度があります。花を前にして散漫に見る様なそんな態度ではなく、一瓶のいけばなの上部から中部へ、中部から下部へ位置をかえて見てゆく様に、あるいは一枝の枝先から各枝の部分を見てゆく様に、一枚の葉ごとに形がいいか破れ葉汚れ葉はないか、花一輪一輪の向き、花の重なり配列、枝葉花とその空間を見つめて細部にわたって注意します。ばあっとおおざっぱに見る様では欠点を発見することは出来ないものです。必ず細部に至るまで順序をつけて見てゆくことです。この検討によって欠点をみつけ出すことが出来るし、それを訂正することによってその作品を美しく、いわゆる「浄化」することになります。透きとおるような美しさをもつ作品、これが大切なのです。古典的ないけばなでも今日的ないけばなでも美しい技術が第一に必要ですから、作品の見方が第一に大切であることは当然です。いけばなの見方には種別がありますが、練習中の人達がなにより必要なことは、技術の美しさです。丁寧に作りあげる技術、それを深く検討するその見方が必要です。美しい技巧 12

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