テキスト1977
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.i'^>.`し•,伝統の花、立花(りっか)を作るときには太い幹を切り、舵(なた)で切りおろす場合が多い。たとえば直幹の足もとを切りおろす場合、鉛筆をけずる様な気持で美しくけずる様な考え方はよくない。そんな考え方では力弥い切り方は出来ない。一刀両断といった気はくを以って誤りのない詑のふりおろしによってこそ、はっきりと美しい切り口が出来るのである。花器の中に入ってしまう足もとではあるが、見えない様な水の中に入る部分にもしっかりとした美しい仕事をしておく、といった考え方は上部の枝葉の扱いも粗略にしない心を捉うことになる。吉川英治作「宮本武蔵」の小説の中に、柳生石舟斎からお通の持ってきた芍薬の花をみて、その切り口の見事さにさすが非凡な達人と、石舟斎の武芸の深さを知った、という話がある。花を活けるとき、足もとのくばり木や花留、T字留など目にたたない様な場所の技巧をはっきりとしておく習慣をつけないと、よい花が入らないものである。技巧は手先の問題ではなく、心のおき方によるものである。Rひっそりと池紫に色づくつぶらな実。さしい色彩をみせる。つぶら実の小紫式部のやさしさを語りつつゆく北国の旅(江越千代子)それほど目にたつ木でもないのに、忘れることの庄来ない詩趣をもっているのは、この低木のやさしさ、古い日本の色のしずけさであろう。花屋で束ねて買ってきたが、やはりこの材料は自分で採集して活けるところに味わいがあるのだろうと思われる。黄色の山菊をつけて活ける。山すその木蔭や渓流にそうてや「むらさきしきぶ」とはなんと風雅な名であろう。f↓'!,r‘6、.‘‘’ R むらさきしきぶさんぎく

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