テキスト1977
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‘,0 「釣りばな」というものは、いけばなの中でも趣味として面白いものでもあるし、意匠としても美しい花といえる。伝統の釣りばなには種々な形式があって、これは床の間を中心とする考え方であるが、今日では床の間中心の考え方よりも、部屋の装飾花として、洋間の隅の飾り得る場所、窓ぎわなどにも適しているだろうし、花器も篭花器、明るい金属器、。フラスチック製品などの花器を利用して今日的な新しい感じの釣り花を活けるのがよいと思う。垂れた茎のアスパラカスにカトレア、なども形よく美しい花が出来るだろうし、垂形のバラも適当な材料だろう。自由な装飾的な考え方で美しい釣りばなを作るのがよRデンドロビュームRてっせんあじさいの葉R 釣り船の花器を高く釣る場合を「遠海の船」といい、低く釣るのを「近海の船」という。また、下に置き花を活けるのを「泊まり船」といい、この場合は花形もひっそりと活け枝葉を静かな形に作る。いわゆる伝説の意匠花というのは、この様な写実と情緒を織りこめて、いけばなの中にその感じを出そうと考えられたのであって、この様な考え方はその時代の花道の中核に、しっかりとした根をおろしてそれが習いごとでもあったわけである。明り窓の方に向けて船のへさき(くさり一本の方)を向けて釣るのを「出船」といい、下座へ向けて船のへさきを向けて釣るのを「入り船」という。この約束は出船入船によってその情紹をあらわす、という意匠的な考え方からきめられたもので、現在はほとんど行なわれていない。「釣り船」のはな@ し14

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