テキスト1976
97/149

Rこれは大きい中国陶器の水盤である。長さ八0センチ、横四0センチ、深さ一〇センチ程度。いわゆる支那水盤としては珍しく大きい水盤。普遥「なまこ」といわれる濃青色のものが一般的だが、これは渋い白釉の陶器である。この朴の花展のとき河原町の古美術店で見つけて買ったのだが、結局、使うことが出来なかった花器だが、今日これを使ってこれに花菖茄をたっぷり入れ、ちょうど池辺に群って咲く自然の惜趣をうつす様な考え方で「菖蒲の大作盛花を活けることにした。菖蒲園から持って帰った花を8本、築も自然の糾みのまま数多く却して、ちょうど菖蒲池そのままの姿を再現する気持ちで水盤の中へ立てならべた。それでも葉の配箇や花のおき方に前後左右の配列を考えつつ、業のすき間の変化、奥行とひろがりなどを考え、また、花葉ともにいけばな的な形から離れて、つとめて写実的に自然のままに挿していった。かなりの分量を挿し入れ、前方のみずぎわの処理や、右方のみずぎわと剣山のみえる部分をどうするかについて考えたが、結島は祁智黒の小石を入れて水面も美しく自然調の花の感じを出す様にした。また、曲線に垂れた葉や、折れた葉を加えて形のアクセントをとったのだが、淡い白黄色の水盤に緑の葉がよく識和し、また花は白、濃青、紫、しほり、の花色がいろいろ配列され、ちょうど菖蒲園そのままに感じられる盛花が出来上がった。これは家庭の花としては大きすぎるし、むしろ会場作品に適当なものだろう。7 R

元のページ  ../index.html#97

このブックを見る