テキスト1976
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先月号テキストには「鑑賞果」についての考え方をお話しました。そして古い形式の写生図を掲載しておきましたが、今月号の作品はその後、作って写真にしたもので、絵もこの原稿とともに書いたのですから今日の考え方と思って誤りないでしょう。鑑貨呆はいけばなではなくて、瓶花、盛花部門の余技のようなものです。が、室内装飾として使えるもので床の間に飾ってもはずかしくない、正式な飾りものなのです。また花展などへ出品してもよいのです。特に注意することは趣味のよいものであること、遊びの様な思いつきではなく、材料の配合、色の調和、配列の技法など、また材料の組み合わせについても上品な趣味であり、新鮮な考え方でありたいと思うのです。先月号に掲載したいわゆる「盛りもの」の感じから、今月号にある様な明るい感じにもって行くことが望ましいのです。さらに明るい意匠を加えて洋花の葉や、たとえば洋蘭の根付きのものを洗ってその根の面白さを見る、それに花があるといった調子で、果物は洋種の果物の色のあざやかなものをつけるといった、そんな感じに配合を考えるのがよいと思います。゜ハンジーの根付きを銀色の盆に飾り、あしらいにレモンの実、いちごの実を二、三個添えるといった調子も美しく見えるし、今日的でよいものです。これが発展すると例えば卓上に果ものを盛るときも、それへ小さい草花を添えて飾るということも出来ることになります。お客様に出す果ものにしても、少しこれを意匠的に考えると、見る人にほっとした感じを与えることになります。こうなると趣味と実益ということになって皆さんに喜ばれることになりましょう。私は皆さんにいけばなを活けるときは、材料の配合を考えることを随分しつこくいっています。形も色調も、意匠的にも技術的にもよくないと駄目ですが、この鑑賞果にしても同じことがいえるのです。いい加減に置き並べるのではなくて、高さ(盛り上り)配樅と空間(容器の見える部分)その形を格好よく配置することが大切なのです。材料は八百屋や果もの店にあるありあわせたものでなくプドウなればツル付き、柿なれば葉つきのものを飾るといった配慰が欲しいのです。鑑賞果容器はチーク材のサラダボール。ベコニアはまっ赤な花,緑の葉があざやかに美しい。プドウの黄緑色の実とサクランボの少し赤くの容器を使う。これは新しい感覚の鑑賞果。色づいたものをひとふさ添えて,明る<美しい鑑裳果を作る。切り花には小さい水入れ10

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