テキスト1976
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R笹の葉に似た山百合、ササユリは山に咲く初夏の花である。低山の草原によく見かけるのだが、切り花として水揚げのよい季節感の深い花である。関東地方ではこの百合を「早百合」ーサユリ、合の中でもいちばん早く咲く意味をその名に冠している。関西地方ではタメトモユリをヨシノユリというのを、関東ではハコネユリという様といって山百に、その土地によって名を変えているのも面白い。ここに掲載の写真はササユリにサンキライの緑の葉をあしらって篭に挿した投入花である。サンキライはこのごろから冬に至るまで野生の赤い実つきの山いばらで、漢字で「山帰来」と書き、また「猿飛いばら」という雅名もある。この二種の配合は山の材料であり季節感の深い花材だが、白竹の篭(かつら篭)も清爽な季節感があり、花と器の調和もびったりしている。自然のもち味に重点をおく、そんな感じの花なので活け方もさっぱりと、のびのびとした形に活けるのが花を引き立てることになる。サンキライはやがて緑の実が大きくなり風雅な姿をみせるようになるのだが、葉だけを活けるのもすがすがしい。最近、洋種の花を多く見かける様になった。シャクヤク、ユリ、テッセン、ツッジの様に日本の花と思われるものまで、すっかり洋種のものに入れ変わってそれが普通のように考えられるまで一般的になっている。おおざっばにいって日本の土地に咲く昔からの品種は静かな美しさ、幽雅といった感じの花が多い。例えば、日本の睡連は聞花が4センチ程度のわびしい花であるのに較べて、私達の見る園芸品の睡述はほとんどが洋種で肌花7センチ程度にも及び華麗な花を咲かせる。日頃、いけばなに使うテッセンの白花、紫花、これも洋種のクレマチスで日本種のものはほとんど見られない。ツッジのアザレア(大輪咲)からシャクヤクの大輪花まで、ほとんど洋種になっている。シャクヤクも日本種のものは花も小さく貧弱だが洋種は大輪花で色も強く美しく、そのうえ水揚げもよい。キク、バラ、シャクナゲ、アザミ、スイセン、ユリなど普通、日本の花と思われるものまでそれが洋種であるときくと、反対にどれがH本の花かとききたくなるほど品種がとって変わってきている。もちろん日本の園芸も発逹しており、外国種と日本種の交配が盛んに行なわれ新日本稲の花丼が栽培されているのだが、私逹が切り花として活ける材料には昔ながらの日本の原種が段々と少なくなっているのは事実である。野原のあざみ、と思うのにこれが洋種かと思うと全く照かされる次第である。その上に純然たる外国種の花をみることが中々多い。洋蘭の類、バラ、アイリス、カーネーション、グラジオラス、フリージャ、スイトビー、季を通じていけばなの材料に用いられているのだが、この様に日本種が昔ながらにまもられている花と、外国種の改良品種との区別や、その性笠を知るということも大切なことである。日本の花はわびしく静かな感覚のものが多く、外国種のものは色彩的に華麗なものが多い。その他に洋花の類が四R ササユリサンキライ4

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