テキスト1976
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花5R花菖蒲今日行われている盛花の様式は明治期になってから始められたものである。江戸初期から中期へかけていちばん盛んであった立花から、生花の形式が考えつかれ、立花を砂鉢(すなばち)に入れるいわゆる「砂もの」の立花が、生花にもとり入れられ、金属器のすなばちに活ける生花が行なわれ、また、陶器の鉢様式の花器や木製のすなばち様式の花器も考カノコユリ枯花えつかれる様になり、いわゆる水盤の生花が行なわれることになった。盛花は生花の水盤挿から発想したものであり、また一方、盆栽の草花寄植(よせうえ)込んだ水草盆栽の考え方をとり入れていけばなとして作りあげたものが、盛花の発想になったもの、という一説もある。とにかく、文人形式の古い床飾り、水盤に植えには盛花というものは見られず、この場合には瓶花を飾るのが正式となっていた。いわば盛花はその後期に生まれたいけばな形式であって、花器から考えても壷や篭、鉢様式の花器、砂鉢の類は多く用いられたが、水盤と称するものはいけばなの花器としては用いられなかったのである。従って今日みる盛花の水盤は明治以後の花器であり、さらにそれが現在の広口様式のコンボートまで変化してきたものであって、盛花の形式とその花器は、明治以後の近代に考えつかれたいけばなの様式である。さて、今日の盛花にはいろいろな様式がある。ー、自然山野に出生する草木の状景を写実的に花器にうつして活けようとする作品。2、自然写実とは関係なく木、草、花、果実、枯花枯葉などを配合して、日本風な風雅をあらわそうとする作品。緒がある。)3、洋花の配合、日本花と洋花を配合して、その形の変化と色調の組成によって、色彩芸術としての特長をもつ作品。4、水盤の特質である「水」を見ること、水而の浩楚さ、花器のみずぎわに盛花のもつ美しさ、その風情を考える作品。5、水盤に活ける水草のいけばな、かきつばたす、いれんの様に盛花なればこそという特長のある作品。以上の様に、水をみるという特長を考えると、当然、特殊ないけばなを作ることが出来ることになる。このテキストには、盛花のいろいろな配合と、花形を作ったが、大作もよく小品の作品もまたよし、水盤と広口の花器(鉢)また平篭の類などを花器として、いろいろ意匠的な花を活けることの出来る盛花もまた楽しいものである(この中に文人趣味、幽雅静寂の情2 盛砂

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