テキスト1976
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六月号は「初夏の盛花」と花菖蒲、すいれんが咲き乱れ私達のいけばなにも「水辺の情緒」を楽しむようになる。水盤に若葉や夏草を活ける趣味はこれから夏へかけての詩情である。を主題にして、季節向きの花を活けることにした。新緑の季節に入る専渓ゼンソウ)をもらった。珍しい花なので、すぐこの写真の様にガラス器に庭の紅シダの若葉を添えて活けた。ザゼンソウは北海道、東北地方の高地に野生する花だが、有名なミズバショウと同じように、サトイモ科の一種である。カイウとよく似た葉があり、花も大体よく似ている。ザゼンソウは三月から六月にかけて咲き、黒褐色の包皮の中に球状の実がある。その形がいかにも光背の前に座禅を組んで安座する姿によく似ているのでこの名がある。かなり重函があるので花器もしっかりとした大きいガラス器に入れた。庭のシダの葉を添えて、それらしい環境に調和するように考えたのだが、夏の山草らしい感じが出ていると思う。花に具味があってあまり喜ばれない花だが、ザゼンソウ、ミズバショウ、マリモなどなんとなく詩的な北部地方の花である。私の家へ来るのも珍しく、先年、北海道のマリモを知人から贈られたが、これは禁制品なのですぐお返ししたが、ミズバショウをもらったのも五月。花の質が堅くこれは活けて一週間ほど日持ちした。よい花であった。数且即、さる知人から座禅草(ザ初夏の盛花旦さぜんそう毎月1回発行桑原専慶流編集発行京都市中京区六角適烏丸西入桑原専慶流家元1976年6月発行No. 156 しヽけばな

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