テキスト1976
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小さければ小さいほど技巧の拙さが目立つ、ということもあってかなり微細な技術が必要、ということになる。盆栽の中に「手のひら盆栽」といわれる小品作品があるのだが、それによく似通った、小さくとも大樹の性格という様に、独特の感覚が必要ということになる。立花というものは意外に安定して倒れないものである。小さい花瓶にかなり重量のあるものを立てるのだが、整然としておさまる。倒れる様な不安感もない。これは花形の中心に直立した(たて幹)が入っており、それに添えて前後左右に枝がひろがり、この枝の左右長短や前後奥行などが重量的にバランスを保つ様にエ夫されているから、四方の重量平均がよいバランスを保つことになる。これは作者の考慮にもよることではあるが、立花の花形の構成そのものが、請(うけ)副(そえ)胴(どう)流枝(ながし)控(ひかえ)などの枝の前後左右の長短均斉が調節されている関係による。伝統の技法というものはこんな点に優れた配慮がなされているわけである。立花では水際(みずぎわ)をひともとに美しくまとめ上げることがむずかしい。最後の仕上げの技術だが、いちばん重要なまとめ、といえる部分である。11

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