テキスト1976
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専渓小品立花(りっか)今年の「華道京展」は四月八日から京都大丸で開俯された。出品者が多いわりに会場が狭く一席3尺程度の場所なので、折角、出品することでもあるし、小さい花席に調和する何かぴりっとしたものをと考えて、お家芸の立花のうち特に小品的な作品を作ることにした。写真の立花は高さ50センチ程度で、花器は古い丹波焼の壺を使うことにした。この花器は先代が好んで花を活けた小さい壷だが、茶壷様のこの花瓶は色も落粁がありひきしまった形が花によく調和する中々よい花器である。10センチ程度の小さい器だが口もとが大きく形にも安定感がある。出来るだけ小さい花をと考えたのだが、会場作品との関係もあって、しめるだけしめてどうやら50センチの高さに仕上がることになった。花材は松を主材に考えだったが、配色の関係もあって水ぎわに紅色の椿とから松の枝(実のある)を小品使って変化をつけてみた。制作時間は5時間程度で出来上ったが、小さく片手で持てる程度なので毎朝会場へ持って行き、午後6時の閉会時間にはまた宅へ持って帰って冷涼の場所に岡くという方法をとったので、会期中を通じて美しく見られ、小さい作品にはこんな便利のよい方法もあるものと思いまた、雑踏の街中に立花を持って歩く一種挿しとする30センチ程度前後しているので花が15年ほど以前に京都毎日新聞ホー私をかえりみて、これも昭和時代の風流人かと思わず微笑した次第であった。写真は作品の大きさを示すために私の身体を一緒に写したのだが大きく見えるけれど実際はもっと小型の作品である。立花は普通1メータ150から2メーター程度がいわゆる標準型となっているのだが、こんなに小さいのは珍しいといわれるほど変った部類に属するものである。ルで流展があったとき、これよりひとまわり小さい立花を出品したことがあり、来会された小原豊雲氏が「桑原さんこれはミニチュア立花ですね」といわれ、なるほどそんないい方もあるものかと感心したことがあったが、実際作る段になると小さければ小さいほど手間がかかり意外にむずかしい技術がいるものである。自然の枝葉には凡その大きさがあり特に小さくひきしまりのある材料をよく選んでとりかかるのだが、根幹になる樹枝の形にも小さくて大樹の感じあるものを選択することが第一、それに作る過程において少しでも目由に枝葉花をさし出すと、体の花形がこわれてしまう、ということもあって、形のバランスと空間材料の形も小さくてしかも勢いのよい調子に仕上げる様に考える。\全10

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