テキスト1976
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図が数種掲載されている。これらによってみると、その時代にかなりの範囲にわたって栽培され、観貨用として賞美されたものらしい。現在は大和の長谷寺や当麻寺、島根県の大根島など牡丹の名所として有名だが、東海地方、北陸地方にも有名な栽培地が多い。園芸品種の変わったものが多く、宝塚沿線の牡丹園には黄色、黒に近い赤色、その他の珍種もあり、趣味の花として年毎に種類を増して行く様である。「花王」に価するものとして西寸ばれている。したがって伝統生花では、牡丹は一種挿しに活け他の花を交えず、と定めており、作品の中に高い品位をあらわすことが大切、とされている。牡丹は四月すえから開花し五月はじめに終る花だが、別に十一月から十二月にかけて咲く「寒牡丹」というのがあり、冬咲きのわびしい中に素朴な美しさがあり、雅趣に富む風情があって初冬には珍しい返り花である。c R「大内重」に大輪のぼたん一本を挿す。この器は食器だが、上のふたをとって上段を花器に利用して、剣山で花を留めた。黒漆に金色の楓の図、銀色の桜の図案が鮮かに美しい。牡丹の紅色の花と黄みどりの葉がたっびりとして、品格のよい落着きをみせている。花器の内部は渋い朱色で器と花の配色が美しい。牡丹は花の華麗さもさることながら、葉がたっぷりとして「下ひろがり」の形に活けることが原則になっている。R焦篭の形に編みあげた大きい篭。60センチ程度の胴張りの篭である。実用的な魚篭なのだが花器として使うのも中々面白い。牡丹は淡紅濃紅の二輪、豊かな葉とともに花器によく調和していると思う。広間の板床に飾りつけると調和のよい花である。ーク材で作ったサラダボール。最近、輪入品であるこの種の木工器具が趣味の店でよく見かけられる。形のさっばりとした単純なものだと花器としても使いやすい。牡丹一種でもよいのだが、この場合は花菖蒲の紫花と組み合わせて活けたが、色彩的にも美しい落秤きのある取合わせとなった。cチ7

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