テキスト1976
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ぼたんは中国の原産の花である。平安朝のころにはすでに日本の各地でも栽培され「栄華物語」や「枕草子」の中にも記されており、江戸時代になるとひろく一般にぼたんの栽培が行なわれたようである。このころに出版された「花坦地錦抄」や「牡丹道しるべ」などにかなり多くの品種が紹介されており、元禄時代の冨春軒専疵の伝書「立花時牡丹には「宮貨草」「深見草」「ニ十日草」などの雅名があり、その盟かな花の形と色、深い情紹と気品の高さは、まことにこの名に値するものといえる。また古い歌に「咲きしより散りはつるまで見しほどに花の下にて二十日経にけり」と、詠んだ藤原忠通の和歌により二十日草という名がつけられたという伝説もあって、古来、ぽたんの京都の漆器と倉敷の笥、タイ製品のチーク材の容器。この三つを花器にして牡丹を活けたが、それぞれ花器に変化があって而白い味わいを見せている。漆器は京都岡崎にある象彦の製品で「大内重」おおうちじゅうという三重かさねの食器である。京都の陶器や漆器には美しい技巧的なものが多く、伝統工芸の香りのあるものが一っの風格をつくっている。また倉敷の工芸は民芸品の本場といってもよいほど農具、エ具をうつした野趣豊かなものが特長となっており、京都の優美とは対照的で面白い。近頃、タイ製のチーク材で作った台所用品が、特殊な工芸品店で見かけられるのだが、チーク材の色調に渋味があり花器に使って中々花うつりがよい。ここに三つの写真をならべてみると、その対照も面白く牡丹を活けてそれぞれに調和した美しさがあり、同じぽたんであっても花器によって、少しずつ感じの変わって見えるのも面白い。大内重のぽたんは高貴な感じがあり、策のほたんは華やかな野趣、花菖蒲と取合わせた盛花には、日本の古い染織にあるような華麗さが感じられる。@ R 6丹互牡ま

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