テキスト1976
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R白い星のあるバラン(斑点バラン)の小葉七枚を上方に立て、下に黒百合を五本つけて小品盛花を作った。黒百合は盛花に活けるよりも小さい花瓶に瓶花に入れるのが上品でよいと思うのだが、ことに一種挿しのほうが花を引立てるのでないかと思うシラボシバランという珍しい品種にとらわれて、却って黒百合の品位を落しているように思う。昨年、乗鞍の山頂の雪渓に近い低い草原に咲いていた黒百合を思い起こす。栽培のむずかしいものらしいが池田の温室で鉢造りのものを見たことがある。Rおそ咲きの八重紅栴とムギを取合わせて盛花を作る。紅梅とムギ、春らしい季節感のある花である。紅梅の花の色とムギの緑、日本的な色の調和ともいえる。和菓子に見るような春の色である。まばらな線条が交叉して、その中にずわえの直上線も見え、ムギの穂と葉色が重なって自然の情紹を感じさせる様な花といえる。花器は濃紺の鉢、たっぷりとした花器にゆったりと調和しているこの盛花は、挿けにくい配合だが、技巧的にうまくさばくと引き立つ花である。8 R @

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