テキスト1976
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この個展の作品は全部で43作であった。このうち一般的にいけばなと考えられる作品が28作、その他、造形作品が15作である。いけばな作品のうちには伝統的な立花3、生花4が含まれている。また瓶花、盛花の中には温和な雅趣を考えたもの、新しい配合、新しい感じを出そうと試みたもの、自然趣味のいけばな、いわゆる文人趣味的な雅趣をあらわした作品など、古雅な感じのものから今日的な新しいものまで、各種の作品があったと思う。いけばな展の会場ではこれらの作品が会場構成の関係から、大小、材の配合、色調の組み合せ、花器の形とその傾向、伝統的な作品、自然趣味的作品、色彩的作品、造形的作品などを、その配置を考え色調を考え、会場効果を考え、来観の人達のいちばん見やすい方法を考えて、列するのが常識になっている。今度の個展でもそんな様式によって陳列したのだが、これは会場装飾装置の関係もあって、専渓こ。f さて、以上の様に各部にわたってめるとき、ある花席は雅趣ある伝統品を並べることにした。と黒系統の台を作って、その背後のを考えた花席もあった。また砂を布所もあった。会前の計画を立て、美しい会場である様に、入場者の見やすい様に、混したつもりである。識階級の人達、美術関係の人達、園芸関係、陶芸関係などその種別が複雑である。この個展をごらん下さっ会場構成を定の花をならべる花席を作り(この花席にはバックを紙障子様式に作った)その一劃にはそれに調和する作また、特に強い赤色系統のバック下部から照明を上方に照射して効果き自然趣味の感じを出そうとした場会場の見通しのよい様に、会場巡笠が楽な感じに流れる様に、花席の形と通路を曲線に作り、この会場の天井照明のかなりの部を消して、別にかなりの数の特設照明をとりつけ雑の場合、入場者の方逹が流れる様に交代していただける様に、その入ロと出口などの問題など、十分配屈入場者にはいろいろな種類がある。花適専門家もあり、流内の教授門下の人逹も多い。あるいは一般知て、いけばなの中でもこんな伝統の作品から、今日的なシュールリアリズムの作品まで、随分種別のあるもの、と考えて下さったことと思うのだが、企画者の立場から作者としての立場から、是非きいて欲しいと思うことがあるので、次にそれをのベさせていただく。花展をごらんになる皆さま方は、むずかしい考え方をお持ちになるのではなく、美しいもの楽しいもの、とお考えになってごらんになるのが一般的だと思う。作者の方もそれで結構、十分有難く思うのだが、流内のいけばなを研究される人達、或は教授される師範者の方達には、花展が盛大に美しく催された、という以外にいろいろ考えるところが多いに迩いない。いけばな展にはいろいろ目標があるものである。習う人達の作品を発表するための花展、これはあくまで真面目なものでありたい。素朴な純真なものであることが必要である。流展というものがある。流儀の代表者が出品して優秀な作品を一堂にあつめるのが目的で、これは流儀の頻であって出品者が努力して花器も花材も選択し、かなり流派団体の責任のともなうものである。今度の場合は、個人展であって作者の個人の責任をともなうものであり、自信のある作品を出品するのが当然である。会塙の作品は普通のいけばなに比較すると平均的に大作である。また―つの催しものという性格から、普通のいけばなとは離れて、鑑賞の人達が楽しむという、ショウ(人に見せるための催し)的性格をもつものであって、したがって出品の中には、それがいけばなの範囲から離れている作品であっても、興味をひくもの装飾美術として価値をもつもの、あるいはこんな作品は洋室の広いホールの装飾造形としては如何でしょう、といった作品も出品されるのである。普通の住宅のいけばな作品もあり中には新しい構想の試験的な考案の場でもある。したがって出品作は平均してばなに比較して大きいのが普通である。ごらんになる人達は、美しい花を見、技術的ないけばなを見、また楽しい作品としてごらんになればそれでよいわけである。なお、このテキスト9。ヘージの作品(桑原素子出品)について少しのべてみる。この作品は盛花である。材料はカユウ、アマリリスの花材の中に「銀製の板状の加工物」が入っている。いけばなは植物材料で作るのが普通である。しかし、花展の場合には花と葉、枯れ木と実などの自然材料の他に、作品の感覚を変えるために植物材料以外の他の添加物を加えて、装飾効果をあげることがある。たとえば造花、布、毛糸の類、紙、金属片などを添加して、植物材料にない慇触を求めようとする、そ一般のいけんな装飾的意匠的な方法で、会場作品の個性を盛り上げようとする、そんな行き方があり、この「銀の加工物」もその形式の―つの手段である。金属類でも「純銀」のもつ重厚さと鈍い光沢の品格が、他の金属類とは異った感覚があり、ことにカユウの緑の茎と花との直立の間にこれを加えて、一属美しさを増そうという作者「桑原素子」のねらいだと思う。その作品のよしあしは別として―つの明快なもち味を出していることはたしかだと思う。「桑原専渓個展」閲催にあたり皆さまの御後援を有難く御礼申上げます。御協力によりまして予期以上の成果をおさめることが出来まして、私の喜びこれにすぎません。会日には御挨拶も不行届きで大変失礼いたしました。あしからず御諒承下さいませ。なお、いよいよ流儀のために努力いたしたい考えでございます。御協力をお願いいたします。桑原専渓個展をかえりみて陳花12

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