テキスト1976
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もある。理論はとにかくとして数百年といわれる永い伝統の中で、いけばなな技術の発展とともに、いけばなの中で美術的ないろいろな工夫が行なわれてきた。そして意匠的な趣向や作品を作って立花から生花、投入花から今日の盛花まで、永い経過をつづけてきたのだが、その中に通じてあることは、いけばなの技術とともに常に「意匠的な工夫」があることである。正統的ないけばなの形式技術の他に、常に附随しているのは「意匠的な工夫」と、「意匠的な作品」が多く作られていることである。匠」とは形、色調などの結合によって新しい装飾的考案を作ることであり、これをいけばなの立場でふり返ってみると、例えば花器の場合、三重切筒、五重切筒、釣舟の花器、釣瓶花器かけ花器、半月釣花器、瓢の花器、などその他いろいろあるだろうが、江戸時代の風雅と自然描写、生活の用具などを写実的にうつしかえた花器の類が随分ある。花留具の中にも亀、蟹、菊水、七宝校様をうつした花留具など、意匠的ないけばなの要具である。これらの逍具によって古い時代のいけばなの形式が考えつかれ、その時代の温雅な「美のエ夫」が行なわれたのだが、これと比較してみると、今日、生活の中にある美術的装飾というものがすっかり変化している。住居、家具、服装、その他の装飾品まですっかり様相をかえている。従って常に時代と共に変るべき性格のいけばなの中に、進歩的な「装飾性のある作品」が生まれるのは当然である。そんな意味において、普通のいけばなでない「装飾的用途のためのいけばな作品」を考えるのもいけばな作家の分野であり、ここに掲載した様な、商業美術的な作品も考えられてもよいし、また考える必要があると思うのである。「意⑧ R横浜の元町で買ってきた手提袋。渋い褐色と強い赤色に染めわけた大きいバッグです。まだ一度も使ってないけれど、仕方ありません貸したげます。というわけでこのバッグに花を入れることになりました。ぬらしてはいけないから、そっと壷を入れて、スイセンを3本かるくつきさす。さあ出来ましセ、五分間のいけばな。少し左の方が淋しいですね。一本葉をたしましょう。少し長く下にたおしてのびのびと見えるように。結構です、それでよろしい、中々よろしい。バッグの色とスイセンの葉の色がとてもいい。お化粧品だとかドル入れなどいれておくよりも、そのままお花を挿して河原町辺を歩いたほうが、より魅力的です。いろいろなものが花器に使えます。皆さん考えてみて下さい。ジーパンも手提袋も花器になります

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