テキスト1976
20/149

スイセンを鶴首の花瓶に一本挿して、床の間のまん中に飾りつける、といった趣味はいいものである。それこそスイセンの高雅さをしみじみ感じられる様な上品な花である。椿を一輪、小品に活けたのと同じように、日本のいけばなの清浄な美しさ、を感じる花といえるだろう。しかし、いけばなには広い範囲がある。閑寂にして風雅を楽しむ花も―つの美である。また、亭登壮にして華麗な作品も必要である。また明るい創作的な作品、考えてみれば花材を見るにつけ、花器を見るにつけ、また装飾の場所の関係もあって、私達花を活けるものは、たとえそれが同じ花材であっても、そのときそのときの必要に応じて調和するいけばなを活けることになる。スイセンは清楚閑雅な花であるといっても、或は分量多く活けて、自然に咲き乱れる情紹をあらわそうとする、そんな作品もあり得る。私達は花器によって副材との配合を考えて、いろいろな趣味のスイセンのいけばなを活けたいと思うのである。ここに掲載したのはスイセン12作だが、その12作の中にもいろいろな趣味の差迩があると思う。それをよく感得して皆さん自身が、新しい工夫をしてもらいたいのである。しずかな日本のスイセンも、工夫によってはモダンな感覚をあらわすことも出来る。葉だけを挿して形を作ったのも2作あるが、葉の面白さを活けるのも、スイセンのいけばなの考え方だろう。Rこの盛花は普通の傾向の作品だが、キンカンの実、スイセン、クロトンの葉の三種を横長の陶器に活けてある。普通は椿というところをクロトンの赤褐色の葉を三枚添えて、少し変った色調とした。洋種の材料でも落着いた感じのものを加えると、スイセンやキンカンの古雅な調子によく調和するものである。広葉のクロトンは三枚とも前向きに、前方へ傾斜させて二枚、ずっと後方に一枚挿して、奥行きを深く作った。、スイセン、オトメツバキの三種を黄土色の長円形陶器に活けた。この瓶花は温雅な趣味の花である。左勝手の基本形に近い応用花形といったところ。この配合は活け上げて調子よく見られる代表的な配合といえる。新年の花として適した瓶花である。たっぷりとして豊かな感じが好ましいと思う。椿の葉をすかせて枝を見せたところ、中央後方に入れたスイセンの葉などに技巧がある。イセンの葉だけを使った盛花。かなり大きい淡褐色の鉢である。あしらいの単弁の紅菊。単調な花だがスイセンの葉を一本ずつ挿して二十本ほどの葉で花形を構成している。葉のみを挿して形を作るのも面白いものである。スイセンといえば花と葉、という常識からはなれてこんな用い方をするのも―つのエ夫であろう。一枚一枚を柔かい形に曲げてそれを組み合わせた。これもスイセンの自然の姿といえる。⑧若松cス置[疇言•~ ~.4 R 4

元のページ  ../index.html#20

このブックを見る