テキスト1976
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R山の柿の実、枝振りのさびた形のものを選んで瓶花に活ける。左長く右方を少し短くして、中央に1本、これは上方から前方へ椿の上へさしかけるように挿し出してある。対照形の花形である。柿と白椿は調和がよく初冬の山村風景といった情緒が感じられる。花器は渋い朱褐色の陶器で口もと太くずんぐりと低い形に安定感がある。実の少ない枝振りに枯淡な感じがある。R辿の枯れ葉と枯花。褐色に枯れ残った花が風雅である。これに温室栽培のバ_フ2本、淡紅色と紅色の花、緑の葉。花器は淡青色の広口の陶器である。多くの草木の中で枯れた実と菓になまなましい新鮮な花を組み合わせると、色彩感もよく面白い調和をみせることになる。(対照形)cすすきの葉3枚、紅色の温室咲きチューリップ2本の小品花である。―つは晩秋の自然‘―つは温室咲の春の花の組み合せである。このc このテキストの写真を撮影したのは11月19日だった。皆さんがごらんになるのは12月10日頃だろうと思われるのだが、そのころになるとすっかり冬に入って季節感が大分変わってくる。そのつもりで見て欲しい。枯れた花葉となまの花の組み合わせは形も面白く色彩的にもきわだって引き立つものであるから、及の草花を保存して冬季の花と組み合わせる、そんな瓶花、盛花を作ってみては如何、とおすすめする。思いかえせば古いことながら、枯れ花を使うようになったのはすでに三十年以前ぐらいになると息っ。そのころ私が花というものはなまの季節の花だけの姿だけではなく、枯れ葉も枯花も植物の中の―つの自然としていけばな材料に使うべきだ、という考え方で私の花展などで使いはじめたのが、そのはじめごろだったと思われる。それほど枯れ花はいけばな材料として用いられていなかったころである。今は、婦人雑誌のカラ)ぺ)ジにも掲載されるほど、装飾効果のあるものということになっているが、時代が変わるとものの見方も変わってくるものとつくづく思うのである。二つは全然異った趣味のものだが、この意外な組み合せが、瓶花の新鮮さをあらわすことになる。単純な線の美しさとそれを引きしめる紅色の花と黄緑の葉。花器は白色の長瓶で、すっきりとのびた形が美しい。3 すすきの葉チューリップ

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