テキスト1976
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て、いよいよ冬の季節に入る。山河はや冬かがやきて位につけり龍太さくら、ぼけ、かきつばたの返りばなが初冬の陽をうけてわびしくもみえる耀条たる景色の中に、山河はようやく冬の落若きをみせ、沈潜した渋く奥深い季節感の中に入ってゆく。私達のいけばな材料も晩秋の残りばなとともに、はや冬のはじめの椿の早咲きの花、すいせん、せんりょう、なんてんの実ものまで、晩秋から冬へのうつりかわり、またあわただしくも湿室咲きのチューリップ、アイリス、ボインセチアなど、美しい洋花が、花屋のウィンドウに見られるようになる。は、初冬の閑寂とした風雅の味わい、落葉した樹々の素朴な姿をしみじみとながめるようないけばな、華やかさをもとめるのではなく、枯淡な落舒きを味わうような、そんな季節感の深い挿花を代表的なこの季節の考え方とする。しかしまた一方には、早くも春の花の温室栽培の花が咲き出し新鮮な緑と華麗な色彩をみせるようになるので、大切なことは材料からくる季節感と美しい華麗な花を活けようとする趣味についての迩和感について、それぞれの区別をたて、混雑させないようにすることである。渋い好みの季節感と華やかな外面の美しさを見ようとするいけばなとの区別を混雑させないことが大切ということである。そして、この二つの行き方にそれぞれ、趣味のよい美しさと、はっきりとした技巧を示すように考えたいものと思っ。この月のテキストには、秋の残花と冬のはじめの花、そんな組み合せで作品を作った。11月、紅葉が落ちつくすと残菊もうら枯れ11月の下旬から12月へかけてのいけばな毎月1回発行桑原専慶流せいひつばき編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1976年12月発行No. 162 しヽけばな

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