テキスト1976
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。ハリの北駅「ギャルドノール」から電車に乗って「シャンティーイ」へ行く。ギャルドノール駅は阪急の梅田駅とは少し小規校のターミナルだが、幹線の発若駅らしくコンコースも混雑して切符売場や構内売店など日本の風景と変わりはない。日本の写真雑誌「。ハリの本」でみた、「シャンティイの古城」を見学しその附迎にあるホテル「シャトー・ド・ラ・トゥール」に泊る予定で電話の予約をしておいたのだが、喫煙自由の車室に入って約40分。シャンティーイに近づくにつれて沿線の美しい田園風景と緑の森がつづいて、やがてシャンティーイ駅に若く。森の多い秋田馳方の郊外駅の様な静かな小駅だったが、迎えにきてくれたのが赤いセーターにグレーのスカートという女の運転手。すぐ近くの森を出てホテルに入る。ド・ラ・トゥールは古い貴族の館といった小さいけれどお菓子で作った様な美しいホテルだった。ジャダス老夫妻の経営で珍しいお客さまの私達四名を歓待してくれたが、広い庭園の花壇、森の中にある中世紀風の古い邸の様なこのホテルの夜は静かに印象の深いものだった。シャンティーイの古城は王朝時代最後の領主であり、フィリップ国王の第四子であったオマール公の隈遁の城で、フランスの森の中で最も美しいといわれる七000ヘクタールの広大な森林の中にある古城と池、ことに王族狩猟のために設けられたという壮大な厩舎(うまや)には、ニ四0頭の馬と七00匹の猟犬が飼育されていたといわれる。。ハリを中心とする近郊には山は少ないが、田函につづく森が多く、この深い森の景色は日本では見ることの出来ない特徴のある風景であり、私逹は深い感動をうけたのだった。壮大な森と湖、そして古城があって、その美しい風景は私達旅行者の心をとらえて離さないのである。プロニューの森はあわただしく見て廻ったので感銘は少なかったが、横光利一の「旅愁」の物語の背景になっている森と湖の美しさを知ることが出来なかったのは残念だった。シャンティーイの森を見て、さらに私述はアラプ人の運転手モハメッドさんの車に乗って。ハリの南方10キロにある「ソー公園」に行くことになった。ソー公園は三百年前にたてられた「コルベール城の庭園」であって、ルイ14世のころには夜毎に優雅な音楽会があって、貴族達の社交場になっていた、という古城と名園がある。幾キロにも及ぶ広い森の中に池庭があり、俣雅な建造物があって、私達が訪れたときはこの広い庭園に数人の人影を見る寂莫とした風景だった。DEF 11 シャトー・ド・ラ・トゥー)レシャンティーイの古城ソー公園

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