テキスト1976
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アレキサンダー三世栢の少し下流にあるセーヌの遊覧船(バトー・の乗り場から船に乗る。セーヌの両岸にはループル、ノートルダム、シャイヨー宮をはじめ有名な建造物が居ながらにして見られるので、乗船の人も多く。ハリ見物の各国人といっしょに美しい遊覧船に乗りこんで二時間ほど上流へ下流へと往復しながら両岸の風景をながめる。今日はモンマルトルのテルトル広場とサクレクール寺院へ行くことになっている。数日前に見学したのだが。ハリの下町の情緒のいちばん印象的な風景をもう一度見ておこうという、そんな目的で私逹も要領よくその附近から地下鉄を利用してモンマルトルに降りる。ムーシュ)(写真・専渓)モンマルトルは二00メーターほどの低い丘だが、その登り道には日本のテレビでも紹介される有名なぶどう園などもあって、今日も丘の上のテルトル広場にはアルバイト画家が数十人ほど集まって、見物の人達の似顔絵をクロッキーで描いて小造い稼ぎをしている。賑やかな街頭の椅子に座るとすぐ木炭で書いてくれるのが一枚五0フランから七0フラン程度で日本人の画家もその仲間におり、とにかく雑然としたふんい気の中に、エキゾチックな風景を見せている。テルトル広場のすぐ近くのサクレクール寺院は京都の洛水寺とよく似ているというのだが、高台の寺院は見物の人逹でいっぱい。高い石段の寺院のすぐ近くにケーブルカーがあってその下の街は賑やかな商店街が並んでいる。とにかくこの辺りはパリ市の下町である。モンマルトルの裏町は狭い通り筋がだらだら坂に並んでいて、荒い石畳の迅に喫茶店や古逆具屋、牛肉屋などがあり、どこかの展買会で見た油絵の中にある風景そのままである。おそらく多くの画題に選ばれた裏町だろうと思われる。古い街角に喫茶店があってそのウィンドーの前に置かれたテーブルには私ひとり、静かな裏街である。君とふたり今日もかわす愛の言葉楽し。ハリの空の下にありて恋は楽し夢よ流れゆく雲ににて流れゆく雲ににてパリの空に高く浮かぷバラ色の空に(「。ハリの屋根の下」より)セーヌの遊覧船c ③専渓パリの10H間奮@ ⑧ 瞥C モンマルトル(バトウ・ムーシュ)10 A•B

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