テキスト1976
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R九月から十月へかけては、郊外の丘や草の川べりに白い尾花の穂が風にゆらめき、ひがんばなの赤がその風景に色を添える。日本の秋の情緒ともいえる風景である。ススキの尾花を茎みじかく切りとって、山栗の枝を添えた秋の風雅の中へ淡紅色のバラを加えて盛花を作った。ススキには葉をつけないで穂の茎だけを揃えて入れ、たっぷりと重ねて挿し、その問にバラのビンクの花を配置して、ススキの淡い褐色と淡紅のバラの色の調和を考えてある。栗の実と葉の緑を加えて、この盛花はひろやかな感じの秋の色である。花形は基本花形のでやや堅い感じの花形を出来るだけのどかな調子に活けた。花器に比較してかなり大きく見えるが、軽やかな材料だけに安定して見える。ススキは葉をつけたまま活けるのもよいが、c ススキ穂だけ使うのも新鮮な感じをうける。紅大輪菊「留主形」c淡青磁のまるい壷、ススキに濃い紅色の大輪菊4本を添えて活ける。ススキを前方に、して色の重なりに効果的な方法を考えた。こんな丸い低い形の壷には背を高く立体花形に活けると調和がよい。ことにススキも菊も匝立した花材であるから、を考えないで匝立した前後の重なりを考えるのが、よい形になる。左に低く菊を1本入れて前方へさし出し、みずぎわの形をととのえる。単純な技巧の花だが色彩もよく、さっぱりした秋の瓶花といえる。カキツバタ(返りばな)菊を後方に挿全体が横に出すこと⑪カキツバタは春四月、五月に咲くのが普通だが、この春の花が終って七月ごろになると返りばなが咲き、さらに九月以後十一月頃まで秋咲きの花が咲く。普通のカキツバタとは別種のこの四季咲きのカキツバタは、四月の花に比較してなんとなく風雅な感じなので、趣味の珍花として好まれる。秋草の九月に季節はずれのこの花の、濃い紫の色は他の草花の中でも特に引立つ材料であって、水盤に一種挿しもよく、緑の草の葉と挿し交えてことに調和がよい。3⑪

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